粉体投入時の飛散による課題とは?集塵機能がついた機器を選んでロスを防ぐ
公開:2024.04.18 更新:2024.12.23
粉体を機器に投入する際に発生する粉塵の飛散は、生産プロセスにおける重要な課題の一つです。この飛散により、原料のロスが増加し、作業場の清潔性や安全性が損なわれる可能性があります。そこで、粉体投入時のロスを最小限に抑えるためには、集塵機能が付いた機器の活用が重要です。集塵機能を備えた機器は、粉塵を効果的に吸引し、作業環境を清潔に保つことができます。
目次
粉体とは?様々な性質を持つ個体の集合体
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粉体は、固体粒子と媒体が混ざった集合体であり、その性質は非常に多様です。ここでは、粉体の概要と性質について解説します。
◇粉体の概念
1993年に物理学者の寺田寅彦によって初めて用いられた「粉体」という用語は、固体粒子と媒体が混ざり合った集合体を指し、流動性や閉塞性、凝集性などの特性を有しています。
これらの粒子は、流動性、閉塞性、凝集性などの性質を持ち、お互いに相互作用力が働いています。工学上では、粉状のものを粉体と呼び、砂状でサラサラしたものは粒体と区別されます。これらを合わせて粉粒体と呼ぶこともあります。
◇粉体の特徴
粉体は、その性質上、気体・液体・固体の中間に位置するため、取り扱いが複雑であることが特徴です。粉体は微細な粒子が空間を占有し、外部からの力によって容易に移動するため、気体のようにふわふわと漂うことがあります。
また、一定の条件下では液体のように流れる性質も示し、容器や表面を覆うように振る舞うこともあります。しかし、特定の条件が揃うと、粉体は固体のように静止し、動かなくなることがあります。この複雑な挙動は、取り扱いを難しくする要因の一つです。
粉体の取り扱いにおいては、いくつかの重要な課題が存在します。まず、粉体は取り扱う際に粉塵を発生させやすく、これが異物混入や衛生面での問題を引き起こす可能性があります。したがって、発塵対策が不可欠です。
さらに、粉体の微量計量は非常に難しく、計量精度が確保されないと製品の品質に影響を及ぼす可能性があります。また、粉体設備では粉体が異物と混ざるリスクもあり、特に食品工場などでは食品の安全性に関わる重大な問題となります。
安全第一!粉体の取り扱い方法と基本知識
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粉体の基礎知識
粉体とは、粒子が細かく分散した物質のことを指します。たとえば、セメントなどがその代表的な物質です。粉体はその特性から、さまざまな業界で利用されています。
粒子サイズ
粉体の粒子は非常に微細で、サイズによって性質が大きく変わります。粒子が小さいほど、表面積が大きくなり、反応性や流動性が向上します。
流動性
先述の通り、粉体の流動性は、粒子の形状や大きさ、湿度、静電気などによって影響されます。流動性に優れた粉体は、加工や搬送が容易なのが特徴です。
湿度
粉体は湿度の影響を受けやすく、高湿度環境では固まりやすくなります。そのため、使用環境によっては、取り扱いが難しくなることがあります。
粉体の取り扱い方法
粉体を取り扱う際には、以下のポイントに注意しましょう。
安全対策
- 防塵マスク:粉体を扱うときは、粉塵が飛散するため、必ずマスクを着用します。
- 保護具:手袋やゴーグルも着用し、肌や目を保護しましょう。
- 換気:作業場所は十分に換気し、粉塵が蓄積しないようにします。
運搬・保管:
- 適切な容器:粉体は適切な容器に入れ、密閉して保管します。湿気や空気を避けるため、乾燥した場所に保管します。運搬時の注意:粉体を運搬する際は、振動を避け、荷崩れや飛散に注意します。
粉体投入時にも注意が必要!粉体投入時における問題
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機器に投入する際に多く粉体が飛散してしまうケースがあります。これにより、いくつかの懸念を引き起こします。まず、粉体が周囲に散逸することで、原料のロスが増加します。この結果、必要な原料が作業場の床や周辺に散らばり、生産プロセス全体の効率が低下します。
さらに、飛散した粉体を掃除するのに時間がかかります。粉体が作業場の床や機器に付着すると、これを清掃する必要が生じます。清掃にかかる時間は生産性を低下させ、労働コストを増加させる要因となります。
また、粉塵が空中に舞い上がることで、作業環境が悪化します。粉塵が作業者の健康を害する可能性があり、作業場全体の清潔さや安全性が損なわれるおそれがあります。
集塵機能が付いた機器がおすすめ
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粉体作業において、粉塵の飛散や周囲への汚染を防ぐために集塵機能が付いた機器が重要です。集塵機能を備えた機器は、作業中に発生する粉体を効果的に吸引し、作業場の清潔を維持することができます。
◇フード付きや集塵機能の付いた大型集塵機器を選ぶ
粉体投入作業時に粉が周囲に飛散して汚れる問題を解決するための方法として、集塵フードを設置することがあります。集塵フードで吸引しながら投入することにより、粉体が投入口や排出口から舞い上がるのを防ぎ、作業場の清潔を保つことができます。
さらに、密閉型の容器を使うことで、粉が飛散するのを防ぎます。カバーを取り付け、作業を密閉された状態で行うことで、周囲の清潔を維持できます。また、ホッパーや容器の下部にノッカーまたはバイブレータを設置することで、粉詰まりを解消し、粉の飛散を防ぎます。これにより、粉体がスムーズに排出され、周囲の汚れのリスクが低減します。
◇集塵機能付きのおすすめ機器
集塵機能付きのおすすめ機器をいくつかピックアップしてご紹介します。
アコー:ダクトレス
アコーのダクトレスは、粉体を投入する際に発生する微粉を効果的に吸引しながら回収する装置です。その特長は、まず粉塵の飛散を防止することにあります。作業者が粉体を扱う際に発生する微粉は、この装置によって吸引され、作業環境の清潔さを維持します。
さらに、粉体を投入しながら同時に吸引できるため、作業中も粉で汚れることがありません。また、アコーのダクトレスは内蔵された集塵機によって、回収される粉体のロスを最小限に抑えます。
投入した粉体はすべて有効な原料として利用できるため、原料の無駄を減らすことができます。さらに、装置はフィルターの詰まりを自動でクリーニングし、常に安定した運転を実現します。全溶接された構造により、メンテナンスも容易であり、内部を洗浄する際も手間がかかりません。
この装置の原理としては、粉体が吸い込まれながらホッパー部に入り、同時に舞う微粉は内蔵フィルターに吸い寄せられます。フィルターに付着した微粉は高圧のパルスジェットによって瞬時に払い落とされ、下部のホッパーに集められます。
MONOVATE:ホッパータンク
MONOVATEの集塵フード付きのホッパータンクは、日東金属工業が新たに開発した製品です。このホッパータンクは、粉体原材料を投入する際に発生する粉じんを集塵するためのステンレス容器であり、集塵機や空気輸送機と組み合わせて使用します。
この製品の特長としては、ホッパーサイズに合わせた大きなフードが装備されており、効率的に粉じんを集塵することができます。その結果、粉体を投入した後の清掃時間を短縮し、作業場の衛生環境を向上させることが可能です。
さらに、オプションとして、粉詰まり(ブリッジやラットホール)対策として、ブローディスク、ノッカー、バイブレーターの取り付けが可能です。これにより、粉じんの詰まりを効果的に解消し、製造プロセスのスムーズな進行を支援します。
粉体投入時のロスを防いだ事例を紹介
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粉体を投入する際には、ロスを最小限に抑えることが重要です。ここでは、実際の事例を通じて、粉体投入時のロスを効果的に防止した方法を紹介します。
菓子製造メーカーは、粉体の飛散を抑え、原料の無駄を削減するために、ダンピングサーバーを導入しました。このサーバーには内蔵型集塵機が搭載されており、原料投入時の粉塵拡散を最小限に抑えることができます。
この取り組みにより、作業現場の清掃時間が短縮され、作業者の衛生リスクも低減されました。また、内蔵型集塵機によって、投入時の粉塵が効率的に回収され、再利用可能な状態で確保されました。これにより、原料の無駄が減り、廃棄物の量も削減されました。結果として、生産性が向上し、製造プロセス全体の効率性が高まりました。
集塵機の導入も検討
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アコーのダクトレスや、MONOVATEのホッパータンクのようにフード付きや集塵機能が付帯した機械もあります。とはいえ、集塵機能付きの機械ではなく、集塵機そのものを導入したいと考える方もいるでしょう。
集塵機には、「バグフィルター」「スクラバー」「サイクロン」「電気集塵機」の4種類があり、それぞれ特徴が異なります。設置条件や、用途、吸引する物質などから、最適な集塵機を選ぶ必要があります。
実際、集塵機を導入したことで工場内の空気環境が清潔になったといった事例のほか、従業員の作業環境がよくなって業務効率が向上したという事例もあります。
フード付きや集塵機能がついた機械を導入することに加え、集塵機そのものの導入を検討するのもいいでしょう。
集塵機があるとどうなる?
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集塵機の導入を検討するにあたり、そもそも集塵機を導入すればどういった効果や恩恵を受けられるのか気になる方も多いでしょう。ここでは、集塵機を導入するメリットや効果について紹介します。
高性能な集塵機を導入することで、工場内の粉塵を取り除くことが可能です。空気中に舞い上がる塵やホコリを吸引することで、工場内の空気環境を清潔に保つことができます。
工場内の空気環境が改善されれば、作業者にとってより働きやすい環境になり、結果的に業務効率が向上するといったメリットがあるのです。
また、有害性の高い粉塵の場合、人の健康を害するリスクがあるので早急な改善が必要です。集塵機があれば、人の健康を害するリスクを低減できるといったメリットもあります。
そのほか、集塵機がない場合、製品に粉塵が付着し、製品から粉塵を取り除く除去作業が発生することがあります。通常の工程よりも作業者の負担が増えてしまうので、結果的に生産能力が落ちてしまうのです。
しかし、集塵機を導入すれば製品に粉塵が付着する量を抑えられるので、余計な工程を省くことができ高い生産能力を維持することができます。
集塵機を選ぶときのポイント
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集塵機を導入するメリットを理解できたものの、そもそもどういった集塵機を選べばいいかわからない方も多いでしょう。ここでは、集塵機を選ぶときの3つのポイントについて紹介します。
タンク容量
集塵機によってタンク容量に違いがあります。同じメーカー、モデルの集塵機であっても容量に違いがあるケースもあり、機械によって吸引量や稼働力に差があります。
とはいえ、容量が多いほど製品としていいというわけではなく、用途や作業者にとって使いやすいかどうかが判断基準となります。というのも、タンク容量が多いと吸引量が増え、稼働力も向上します。一方で、容量が増えると重量も増し、小型のものと比べて作業性が低下する可能性があります。
そのため、実際に使用するシーンをイメージして、タンク容量を決めることが大切です。
吸引する物質
先述の通り、ひとえに集塵機といってもさまざまな種類があり、集塵機によって吸引できる物質や、吸引が得意な物質に違いがあります。
たとえば、通常の粉塵の場合は乾式の集塵機で問題ありませんが、水分を含んだ集塵機の場合は乾湿両用タイプのほうが望ましいとされています。工場内でどういった物質が飛散しているかを把握し、最適な集塵機を選択することが大切です。
集塵機を導入するときに押さえておきたい3つの注意点
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粉体投入時に粉塵が飛散してしまい、工場内の空気環境を悪化させてしまうことがあります。そこで、集塵機能がついた機器を使うことで、粉塵の飛散を抑制することが可能です。
また、集塵機能がついた機器だけでなく、集塵機そのものを採用するといった方法もおすすめです。先述の通り、集塵機を導入すれば、工場内に飛散した粉塵を取り除くことができ、空気環境を清潔に保つことができます。
ただし、集塵機を導入するときは主に3つの点に注意しなければなりません。
定期点検をおこなう
集塵機を導入したら、定期的に点検・メンテナンスをおこないましょう。トラブルを放置したまま使用しつづけると、集塵機が故障してしまって動かなくなってしまうことがあります。集塵機を稼働させられなければ、作業がストップしてしまって、生産効率が大幅に低下してしまいます。
また、集塵機の修理や、新しい機械の導入にもコストがかかってしまうことから、定期的に点検をおこないトラブルを未然に防ぐことが大切です。
集塵機の点検についてはこちらの記事で解説していますので合わせて読んでみてください。
大型集塵機のトラブル防止に定期的な点検が重要!主な点検内容と法令
フィルター清掃・交換をおこなう
集塵機に搭載されているフィルターは定期的に清掃しなければなりません。しっかりと清掃しないと、目詰まりをおこして、集塵機本来の性能を発揮できなくなってしまいます。また、フィルターが詰まったまま使用しつづけると、集塵機本体の故障につながりかねません。
ただ、清掃していれば永久的に使用できるものではなく、一定期間が経過したら新しいフィルターに交換する必要があります。
引火性・爆発性物質を吸引しない
粉塵爆発防止のために、引火性・爆発性物質は吸引しないように十分注意しましょう。
以下、引火性・爆発性物質の代表例です。
- 引火性物質:シンナー、ガソリン、ベンジン、灯油など
- 爆発性物質:ニトログリセリンなど
- 発火性物質:アルミニウム、マグネシウム、亜鉛など
アコーのダクトレスのように集塵機能が付帯した機械を選ぶほか、集塵機を導入することで、工場内の空気環境を改善できます。工場内の空気環境をよくすれば、作業効率が向上し、生産能力が高まるのがメリットです。
また、作業者の健康にも配慮できるので、作業者にとって働きやすい環境づくりができます。そして、自社のイメージアップにつながるといった間接的なメリットもあるでしょう。
気になった方はまず集塵機メーカーのHPを覗いてみてください。