大型集塵機で重要な風量!必要風量の計算方法と風量が下がる原因
公開:2024.03.12 更新:2024.12.23
大型集塵機の効率的な運用に欠かせない要素の一つが風量です。風量が適切でないと、粉塵やごみの効果的な収集が妨げられます。必要風量を正しく計算することは、集塵機を選択する際に不可欠です。また、風量が低下する主な原因とその対処法を理解することも重要です。
目次
集塵機で重要な風量とその他の性能を左右する要素
集塵機にはさまざまな種類がありますが、用途に適した集塵機を選ぶことで効率的な集塵が期待できます。ここでは、集塵機で重要な風量や、風量以外の重要な要素について解説します。
◇集塵機の風量について
集塵機の風量は、1分間に吸い込む空気の体積を示す指標であり、その単位は「m3/min」です。風量が大きいほど、集塵機はより多くの空気を吸引し、それに伴い粉塵やごみをより効果的に取り除くことができます。
必要風量は距離の二乗に比例しています。これは、ゴミの位置から吸込み口までの距離を短縮することが、集塵効率を向上させる上で重要であることを示唆しています。したがって、ゴミの発生源から吸込口までの距離を最小化することが、集塵機を最適に活用するための鍵となります。
また、吸込口から集塵機までの距離も重要です。これは風量の計算式において制御風速として影響を与えるため、適切な距離設定が集塵機の性能を最大限に引き出す上で不可欠です。
◇風量以外の性能を左右する要素
集塵機の性能は風量だけでなく、他の要素も重要です。風量以外の性能を左右する要素には、以下のようなものがあります。
出力
出力は集塵機が使用しているモータのパワーを示す数値です。モータの出力が大きいほど、集塵機はより強力な吸引力を持ちます。しかし、同じ出力でも他の要素により集塵能力に違いが出ることがあります。出力が高い場合は、通常は集塵機がより効率的に動作し、大きな面積や重い粒子などを処理できる可能性が高まります。
電圧
電圧は集塵機の入力電圧を示しています。異なる環境や地域では、電圧が異なることがありますが、表示されている範囲内で対応可能な電圧が示されています(例: 100V~240V)。高い電圧は通常、モータをより効率的に回転させることができ、したがって集塵機の性能向上に寄与します。なお、三相交流や単相交流などの異なる電力供給方式があり、それに応じて集塵機が適切に機能するように設計されています。
静圧
静圧は、集塵機が風量を得るためにホースや装置の抵抗に打ち勝つ必要がある風の力を指します。静圧が高いほど、集塵機は抵抗に強く、効果的に風を送り込むことができます。これは、特にホースやノズルの形状やサイズに合わせて調整されることが一般的です。
◇集塵機の風量と静圧の関係
大型集塵機の選定において重要なポイントは、「静圧」と「風量」の二つの要素です。高い静圧を持つ集塵機は、異物が表面に付着している場合や吸引対象が固定されている場面で効果を発揮します。例えば、掃除機のホースを床に密着させることで、静圧が高まり、付着した異物を効果的に吸引できます。
一方で、高い風量を持つ集塵機は、広い範囲の空気を素早く吸引でき、空中に飛散した粉塵や微粒子を収集するのに適しています。これは例えば換気扇のような用途で重要です。
両者の関係性としては、静圧と風量は背中合わせの関係にあります。つまり、一方が増えると他方が減少する傾向があります。例えば、掃除機のホースを地面に密着させると静圧が上がりますが、同時に風量は減少します。
最終的な集塵機の選定においては、使用環境や対象物の性質によって静圧と風量のバランスを考慮する必要があります。異物が表面に付着している場合は静圧が、広い範囲の空気中の微粒子を収集する場合は風量が特に重要です。
集塵機の必要風量は?計算方法について
画像出典先:チコーエアーテック株式会社
集塵機を正しく選ぶためには、必要な風量を知ることが重要です。必要な風量が少ない集塵機を選んでしまうと、粉塵を十分に吸い込むことができず、作業効率が低下したり、健康被害を招いたりする可能性があります。
◇必要風量の計算方法
必要風量(Q)の計算式は以下の通りです:
Q=60×Vc×(10×X2+A)
ここで、各記号の意味を解説します:
・Q : 必要風量(単位は m3/min) – これは集塵に必要な風量を表します。
・Vc: 制御風速(単位は m/sec)
・X : 距離(単位は m) – 粉塵発生源から吸込口までの距離を示します。
・A : 開口面の面積(単位はm2)- A)は吸込口の大きさで、長さと幅をかけたものです。
フードの型式・形状から必要風量を算出します。
囲い式
この形状の場合、開口面の平均風速(Vo)を用いて必要風量(Q)を算出します。
Q=6×A×Vo=60×A×Vc
外付け式:長方形または円形キャノピー型フード
この形状の場合、制御風速(Vc)を用いて必要風量(Q)を算出します。
Q=60×VC×(10X²+A)
※ここで、Xは距離、Aは開口面積を示します。
外付け式:自由空間に設けたフランジ付円形、または長方形フード
この形状の場合、制御風速(Vc)と開口面積(A)を用いて必要風量(Q)を算出します。
Q=60×0.75×VC×(10X²+A)
外付け式:自由空間に設けた円形、または長方形フード
この形状の場合、制御風速(Vc)、開口面積(A)、およびフードの高さ(H)を用いて必要風量(Q)を算出します。
Q=60×1.4×P×H×Vc
※ここで、Pはフードの面積を示します。
これらの式を用いて、集塵機の必要風量を適切に算出することが重要です。フードの形状や型式に応じて、必要な風量が異なるため、正確な計算が必要です。
◇制御風速について
制御風速は、労働安全衛生法において規定された吸引風速の最低値であり、取り扱う物質や作業内容、局排のフード形式に応じて異なります。この風速は、特定の作業環境での安全性を確保するために設定されています。
特に、特定化学物質を扱う場合、局排の形式や有害物濃度(抑制濃度)が規定されていることがあります。一部の特定化学物質用の局排では、有害物濃度が風速よりも重要な指標とされ、この濃度が制御の基準となります。なお、抑制濃度は作業者とフードの間の特定の位置で測定された有害物の気中濃度を指し、特定の物質ごとに異なる濃度が設定されています。
したがって、「制御風速」とは、特定の化学物質の有害物濃度が規定されている場合には、その濃度を達成するために必要な吸引風速を指します。この制御風速は、労働環境で発生する有害物質を適切に制御し、労働者の安全を確保するために重要な要素となります。
集塵機の風量が下がる原因と対処法
集塵機の風量が低下する原因はさまざまですが、そのよくある要因と対処法について以下で解説します。
◇ファンのインペラーやダンパーに粉塵が付着
集塵機の風量低下の主な原因は、ファンのインペラーやダンパーに粉塵が付着することです。これに対処するためには、差圧計を設置し、風量の変化を管理することが重要です。定期的な測定は、ファンやダンパーに付着した粉塵による圧力損失を検知するのに役立ちます。
ダンパー前後に点検口を設置することも推奨されます。これにより、付着物の堆積を容易に確認し、点検口からアクセスして付着物を取り除くことができます。これらの対処法を実施することで、集塵機の性能を維持・向上させることができます。
◇フィルターの目詰まり
風量の低下は、フィルターの目詰まりも原因の一つとされています。新しいフィルターは、バルスジェットやフィルターはたきハンドルなどの払い落とし機能によって表面の粉塵を取り除くことができますが、経時的には粉塵が蓄積し、繊維の間に侵入して目詰まりが生じます。
これによって集塵機や吸引装置の吸引力が低下し、効果的な清掃が難しくなります。同時に、フィルターの性能も低下し、粉塵や微粒子の十分な除去が期待できなくなります。
フィルターの目詰まりは単なる性能低下だけでなく、故障や吹き漏れのリスクをも引き起こす可能性があります。劣化や損傷が進行すると、機器の正常な機能が妨げられ、内部に粉塵が侵入することで不具合が生じる可能性が高まります。
適切な対策として、1~3年ごとのフィルターの定期的な交換が勧められます。使用条件によっては早期の目詰まりが発生することもあるため、定期的なメンテナンスが不可欠です。風量が低下し、かつフィルターの清掃によって回復しない場合は、新しいフィルターへの交換が必要です。これにより、機器の性能を維持し、故障や吹き漏れのリスクを軽減できます。
集塵機の風量は、吸い込む空気の体積を示し、風量が大きいほどより多くの空気を吸引し、粉塵やごみをより効果的に取り除くことができます。風量は距離や開口面積によっても影響を受け、距離を短縮することで集塵効率を向上させることが重要です。
また、集塵機の性能には風量以外の要素も影響を与えます。出力、電圧、静圧などが性能を左右し、特に静圧と風量のバランスが重要です。静圧が高い集塵機は異物が表面に付着している場合に効果を発揮し、風量が高い集塵機は空中の微粒子を収集するのに適しています。
集塵機の風量が低下する原因として、ファンやフィルターへの粉塵の付着や目詰まりがあります。これに対処するためには、定期的な点検やメンテナンスが必要であり、フィルターの定期交換や清掃、付着物の除去などが効果的な対策となります。風量の低下は集塵機の性能低下につながり、作業効率や効果が損なわれる可能性があるため、定期的なメンテナンスは重要です。