産業環境における排気装置と集塵機は、有害物質の管理と作業環境の改善において重要な役割を果たします。局所排気装置は有害な化学物質を発生源近くで排出し、作業環境を改善します。一方、集塵機は空気中の粉塵や有害物質を除去して大気汚染を防ぎます。これらの装置の導入により、作業者の健康被害を防ぎ、工場環境をより安全かつ清潔に保ちます。
目次
集塵機と排気装置の違いは?類似装置を解説

集塵機と排気装置は、産業環境において重要な役割を果たす装置ですが、それぞれ異なる機能と目的を持ちます。ここでは工場等の粉塵対策や作業環境改善に有効な集塵機並びに類似装置についてそれぞれ特徴を解説します。
◇集塵機についておさらい
工場などでの有害物質を回収、分離、無害化するために空気清浄装置には「除じん装置」と「排ガス処理装置」の2種類あり、除じん装置の一種が「集塵機」です。
集塵機は空気中に舞う粉塵やヒュームなどの有害物質を吸引して、工場外への有害物質の排出を防ぎ、大気汚染を防止する目的で使用されています。サイクロン式やろ過式、重力沈降式など、さまざまなタイプがあり、粒子を分離する方法によって使い分けます。
◇局所排気装置
局所排気装置は、作業場や工場などで発生する有害な化学物質を、その発生源付近で集めて排出する装置です。この装置は、有害物質の発生源にピンポイントで設置されるため、作業環境に応じていくつかの形態があります。
囲い式
ドラフトチャンバー型やグローブボックス型と呼ばれるもので、有害物質の発生源をボックスで覆い、装置内で作業が行われる密閉型の排気装置です。
外付け式
スロット型、ルーバー型、グリッド型と呼ばれるもので、有害物質の発生源の近くに設置され、空気を吸い込んで装置内で処理し、排気します。
レシーバー式
キャノピー型とも呼ばれ、天井などに設置されます。このタイプは、空気を積極的に吸引するのではなく、部屋の気流を利用して有害な空気を受け止める装置です。
◇プッシュプル換気装置
プッシュプル換気装置は、有害物質を排気するための装置で、その名の通り、空気を吹き出す「プッシュフード」と気流を吸い込む「プルフード」の二つを組み合わせて使います。この装置は、自動車や鉄鋼の塗装現場、アーク溶接現場、手持ちグラインダーを使う研磨現場などの作業現場で活躍します。
プッシュプル換気装置には、主に密閉式と開放式の2つの種類があります。
密閉式は、周囲を壁で囲んで作業場を密閉し、室内全体に気流を発生させて換気するタイプです。壁で囲むため、設備が大がかりで設置コストも高くなりますが、密閉されているため、有害物質の吸引力が高くなります。
一方開放式は周囲を壁で囲まず、作業場の一部分だけに気流を発生させるタイプです。密閉されていないため、気流の途中に障害物があると適切に換気できない場合もありますので、注意が必要です。
工場内に存在する有害物質とは?適切な集塵が必要な理由

画像出典先:株式会社愛研
工場内で作業する際には、さまざまな有害物質が発生します。これらの有害物質は、作業プロセスや素材の性質によって異なり、例えば粉じん、有機溶剤、化学物質の蒸気、金属の粉塵、および他の化学物質が挙げられます。
◇工場に存在する可能性がある有害物質
「ばいえん(煤煙)」は、工場で燃料などを燃やす際に発生する煙で、主な成分には硫黄酸化物やばいじん、一酸化炭素が含まれ、「粉塵」には、工場の操業によって排出されるもので一般粉塵とアスベストなどの特定粉塵があります。
光化学スモッグの原因としても知られている、「揮発性有機化合物(VOC)」は、有機溶剤として広く使用されていて、塗料やインク、接着剤、洗剤、ガソリンなどに含まれる物質です。
大気汚染防止法で指定された28種類の特定物質は、人の健康や生活環境に被害を及ぼす可能性があると言われ、アンモニアやホルムアルデヒド、硫化水素などが含まれます。
◇工場で集塵が必要な理由
粉じんは、破砕、研磨、解体などの作業によって大気中に放出されます。粒子の大きさは様々で、大きい粒子は呼吸器の表面に付着し、細かい粒子は肺胞まで達してしまいます。
粉じんが多く発生する環境では、長時間にわたって大量の粉じんを吸い込むと、これが体外に排出されずに肺に蓄積されます。その結果呼吸機能が低下し、じん肺や肺腫瘍、ぜんそくなどの健康リスクが高くなります。
集塵機は、作業員の健康被害や大気汚染を防ぐために、空気中の粉じんを減らす役割があります。
局所排気装置・大型集塵機それぞれの用途

局所排気装置と大型集塵機は、産業環境において異なる目的と用途を持つ排気装置です。それぞれが特定の作業環境や条件に対応しており、効果的な有害物質の管理や除去を行います。ここでは、それぞれの装置がどのような場面で使用されるかについて解説します。
◇局所排気装置の用途
局所排気装置は、様々な作業現場で幅広い用途に使用されています。これらの装置は、化学系や生物学系の研究から製造、加工、塗装などの工業系まで、さまざまなジャンルで薬品や粉じんなどの有害物質の対策に活用されています。
例えば、加熱混合作業のように、作業が開放状態で行われる場合には、室内の熱気や臭気が拡散してしまいます。こうした場合、囲い式の排気フードを設置することで、作業性を損なわずに臭気の拡散を抑制し、作業環境を改善することができます。
また、有機溶剤を用いて行う洗浄作業では、有機溶剤蒸気の拡散を防ぐために下方吸引式の排気フードを設置することが効果的です。これにより、作業者の安全を確保しつつ、作業性を考慮した排気設備を確保することができます。
つまり、局所排気装置は、作業現場における有害物質の排出や拡散を防ぎ、作業環境の改善と作業者の健康・安全を確保するために幅広く活用されています。
◇大型集塵機の用途
大型集塵機は広範囲で発生する粉塵やガスを集める役割があるため、工場全体が粉塵やガス、ミストなどで「もや」がかかった状態になる場合、工場全体に対応した大型集塵機を導入することが効果的です
また、規模が大きい工場や大量の粉塵が発生する現場では、長時間集塵をする必要があり、このような場合にも大型集塵機が活躍し、大量の粉塵を長時間集塵できるだけでなく、工場内の粉塵を一括して処理できます。
換気装置を設置する際の種類別の注意点

換気装置を設置する際には、装置の種類や設置場所によって異なる注意点が存在します。適切な設置方法を選ぶことで、効率的な排気や換気が可能となり、作業環境の安全性を確保することが可能です。
◇集塵機
集塵機を選定する際の第一のポイントは、吸引する物質の種類です。水分を含んだ木くずや湿った粉塵を吸う場合は「乾湿両用型」を、乾燥した粉塵(石膏ボードやコンクリート粉など)のみを吸引する場合は「乾式専用型」を選ぶ必要があります。これらのタイプはフィルターの構造が異なり、誤った使用をすると故障の原因になります。
次に、電動工具との連動機能の有無を確認しましょう。丸のこやグラインダーなどと接続する場合は、電動工具のスイッチと連動して作動するタイプが作業効率を向上させます。通常の掃除機としても使用したい場合は、T型ノズルの有無もチェックが必要です。
また、集塵機のタンク容量も重要です。大容量のものはチリ捨ての頻度を減らせますが、本体のサイズや重量が増すため、設置場所に応じた選定が求められます。
◇局所排気装置
有害物質の種類によって適した排気方法が異なるため、作業環境に合った設置方法を選ぶことが大切です。また、一部の自治体では排気方法に関する条例が定められている場合があるため、設置前に確認しておく必要があります。
さらに、局所排気装置を設置する際は、労働基準監督署への届出が必要です。設置後も、年に一度の自主検査を行い、点検記録を適切に保管しなければなりません。
◇プッシュプル換気装置
プッシュプル型換気装置を設置する際は、労働基準監督署への届出が必要です。工事着工の1か月前までに、プッシュプル型換気装置摘要書(様式第26号)と機械等設置届(様式第20号)を提出し、承認を受けなければなりません。承認が下りるまでは工事を開始できないため、早めの準備が求められます。
そして、塗装の品質管理や乾燥促進が求められる環境では、密閉式のほうが適しており、多機能なプッシュプル型換気装置の導入が推奨されます。
メンテナンスと点検について

換気装置のメンテナンスと点検は、作業環境の安全を守るためにとても大切です。定期的に点検することで、装置が正常に機能しているか確認でき、故障や不具合を未然に防ぐことができます。また、労働安全衛生法では点検が義務付けられている装置もあるため、事前に確認して適切な対応をすることが必要です。
◇集塵機
定期自主検査では、フードやダクト、集じん機、ファン・ブロアなどの設備の摩耗や損傷、粉じんの堆積、風速や騒音の異常を確認します。測定にはスモークテスターや風速計、ピトー管、温度計、絶縁抵抗計などが必要となり、状況に応じて振動計や粉じん濃度測定器などの追加機器も使用します。
日常的なメンテナンスでは、設備の清掃や劣化部品の交換を行い、定期点検では装置全体の動作確認を実施することで、安全性と性能を維持できます。適切な点検と管理を行い、換気設備の正常な機能を保つことが、作業環境の安全確保につながります。
◇局所排気装置
排気装置のメンテナンスは、従業員の健康を守るために欠かせません。装置が故障すると有害物質が適切に排出されず、作業者の呼吸器や皮膚を通じて体内に吸収される恐れがあります。これが長期間続くと、中毒症状や内臓疾患を引き起こし、場合によっては精神的な影響を及ぼすこともあります。
また、排気装置の機能が低下すると、作業環境に粉塵や汚染物質が蓄積し、生産される製品に悪影響を与えます。製品にほこりが付着すれば不良品の発生につながり、作業員のモチベーションや生産効率の低下も招きます。高品質な製品を安定して生産するためには、作業環境の管理が不可欠であり、その一環として排気装置のメンテナンスが求められます。
労働安全衛生法では、1年に1回の自主点検が義務付けられ、点検記録は3年間の保管が必要です。2014年の法改正により、有害物質674種類に対するリスクアセスメントが義務化され、特定化学物質や有機溶剤などの管理が厳格化されています。規定を守らなかった場合、50万円以下の罰金が科されるため、適切な管理を徹底しましょう。
◇プッシュプル換気装置
プッシュプル型換気装置の定期自主検査指針は、有機溶剤中毒予防規則や鉛中毒予防規則などに基づき、装置を適切に維持管理することを目的としています。指針では、検査項目や方法、判定基準が詳しく定められており、フードやダクト、送風機、排風機、電動機などの各部位について、構造や状態、風速や気流の確認が必要です。さらに、スモークテスターや風速計、ピトー管、マノメータなどの測定器具を使用することが推奨されています。定期的な自主検査を実施し、装置の性能を維持することで、安全な作業環境の確保につながります。
工場に局所排気装置を導入し改善した事例

工場に局所排気装置を導入することで、作業環境の改善や作業者の健康・安全の向上が実現される事例が数多く存在します。ここでは、局所排気装置を導入した工場での具体的な改善事例について解説します。
◇溶接作業における溶接ヒュームの集塵事例
こちらの工場では、これまでマスクや扇風機を用いて対処してきましたが、工場内の環境悪化が懸念されていました。根本的な解決策として集塵機を設置し、溶接ヒュームを局所排気することが決定しました。
壁際での溶接作業に備え、フレキシブルアームの集塵フードを4箇所に設置し、各箇所には壁際にダクトを通して、作業員の柔軟な動きを考慮します。そして、最長3mのフレキシブルアームを選び、4つのフードの風量を満たす集塵機を設置しています。
フレキシブルアームの採用により作業中の邪魔にならず、作業位置に応じて効果的に吸引できるため、作業環境が改善され、工場内の煙や不快な感じが軽減されました。
◇複数個所で粉塵が発生する化学工場の事例
異なる種類の鉱物系粉じんを一括して集塵する必要があるため、まずは粉じん爆発のリスクを考慮し、爆発対策の施された粉じん局所排気装置を設置しました。また、複数の集塵箇所と多様な集塵方法に対応するため、局所排気装置の設計とデータ収集に時間を費やしました。
そして、局所排気装置の使用状況に合わせて外気を導入し、内部循環しながら、除湿機の適切な運用できるようにして、囲い式フードにはドラフトチャンバーを導入しています。
外付けフードでは、粉じん捕捉点での風速を1.0m/sに保つために、ドーナツ型の外付けフードを採用して、夏の高温高湿での作業環境を整えます。
さらに、夏季の高温高湿度状況に対処するため、除湿機には冷却機能を備えたタイプを選定し、安定した生産環境を確保しました。
おすすめの集塵機メーカーを紹介
こちらでは、大型集塵機を探している担当者の方におすすめのメーカーを3社紹介します。
◇株式会社アコー

アコー株式会社は、オーダーメイドの集塵機を提供しており、顧客のさまざまなニーズに対応しています。特徴的な製品としては、エアショックバグフィルターやプリーツバグフィルターがあり、コンパクトで省スペースながらも高い性能を発揮します。また、耐酸・耐アルカリ性に優れ、最高260℃まで対応するフェルトろ布バグフィルターや、高温ガスの処理が可能なセラミックフィルターなど、高い耐久性を誇る製品も揃っています。これらは、設置場所に応じて選べる柔軟性があり、業界ごとの特有の課題にも対応しているまて、安全性と効率性を両立させることが可能です。そしてオーダーメイド対応で、個別の問題を解決できる点もアコーの魅力です。
会社名 | 株式会社アコー |
本社 | <所在地> 〒279-0022 千葉県浦安市今川1-1-40 <電話番号> 047-352-4761 |
大阪営業所 | <所在地> 〒564-0062 大阪府吹田市垂水町3-24-1 <電話番号> 06-6368-9551 |
静岡営業所 | <所在地> 〒438-0211 静岡県磐田市東平松500-1 <電話番号> 0538-86-6478 |
公式ホームページ | https://www.acokk.co.jp/ |
また、環境に配慮した製品とサービスを提供し、持続可能な社会の実現を目指しています。最新の技術を駆使し、効率的で安全な集塵システムを提供し続けています。
株式会社アコーについて詳しく知りたい方はこちらも併せてご覧ください。
さらに詳しい情報は公式ホームページでも確認できます。ぜひチェックしてみてください。
◇アマノ株式会社

アマノ株式会社は、集塵機の分野で信頼性の高い製品を提供しています。特に、業務用から産業用まで対応できる多彩なラインアップが特徴です。アマノの集塵機は、精密なフィルタリング性能を誇り、微細な粉塵やガスの処理にも対応できます。これにより、製造業や食品業界など、過酷な環境でも安心して使用することが可能です。また、メンテナンスもしやすく、フィルターの交換や清掃が簡単にできるため、長期間にわたって使い続けやすくなっています。さらに、省エネルギーで運用できる設計や、騒音低減に配慮した仕様も、環境に優しく、コストパフォーマンスに優れた点がアマノの強みです。
会社名 | アマノ株式会社 |
所在地 | 〒222-8558 神奈川県横浜市港北区大豆戸町275 |
電話番号 | 045-401-1441 |
公式ホームページ | https://www.amano.co.jp/ |
また、地域社会に根差した製造・販売体制を整え、顧客の要望に即した製品の創造・開発に取り組んでいます。持続可能な社会の実現を目指し、環境に配慮した製品とサービスを提供しています。
アマノ株式会社について詳しく知りたい方はこちらも併せてご覧ください。
◇株式会社流機エンジニアリング

株式会社流機エンジニアリングは、独自の流体および環境制御技術を活用した環境ソリューションメーカーです。強みは、顧客の課題に応じて柔軟に製品をカスタマイズできる技術力にあります。特に集塵機開発では、独自のフィルター技術を駆使し、「省スペース」や「メンテナンスフリー」などの特徴を持つ製品を提供しています。
会社名 | 株式会社流機エンジニアリング |
会社住所 | 〒108-0073 東京都港区三田3-4-2 いちご聖坂ビル |
電話番号 | 03-3452-7400 |
公式ホームページ | https://www.ryuki.com |
例えば、プリーツ成形フィルターを採用し、設置スペースを削減しながら高い集塵性能を実現しました。
株式会社流機エンジニアリングについて詳しく知りたい方はこちらも併せてご覧ください。
産業環境における重要な装置として、集塵機や局所排気装置などが挙げられます。集塵機は空気中の粉塵や有害物質を除去し、大気汚染を防ぐ目的で使用され、サイクロン式やろ過式などのタイプがあります。
一方、局所排気装置は有害物質の発生源近くで排出し、作業環境を改善します。プッシュプル換気装置も有害物質の排出を行いますが、密閉式と開放式の2つがあり、環境に合わせて選択されます。
工場では粉じんや化学物質などの有害物質が発生し、これらの集塵が必要な理由は、作業者の健康被害を防ぎ、大気汚染を抑制するためです。局所排気装置は化学系から製造まで様々な場面で使用され、作業環境を改善し、作業者の安全を確保します。
一方、大型集塵機は工場全体の粉塵やガスを集める役割を果たし、広範囲で発生する粉塵に対処します。局所排気装置の導入により、溶接作業などの場面では作業環境が改善され、粉塵が発生する化学工場では爆発対策も考慮された設備が導入されています。