大型集塵機におけるフィルターの役割と形状別・素材別の種類
公開:2024.01.18 更新:2024.12.23
大型集塵機の運用において、フィルターは欠かせない要素です。これらのフィルターは、粉塵や異物を取り除き、清浄な空気を排出する役割を果たしています。こちらでは、各フィルターの役割と、その形状別、素材別の種類について詳しく説明します。
目次
集塵機のフィルターは何のため?役割と効果
集塵機のフィルターは、粉塵や異物を取り除いて、クリーンな空気を排出するための重要な部品です。それぞれのフィルターの役割と、複数のフィルターを設置する理由について解説します。
◇それぞれのフィルターの役割
集塵機のフィルターは何種類ものフィルターが設けられている場合があり、それぞれに異なる役割を持ちます。以下で、それぞれのフィルターの役割について解説します。
1次フィルター
1次フィルターは、集塵機内に吸い込まれた粉塵を捕らえ、一か所にまとめる役割を果たします。このフィルターは基本的に使い捨て可能で、交換が容易です。1次フィルターの役割は、粉塵を初段階で取り除くことで、後段のフィルターが効率的に機能するために重要です。
2次フィルター
2次フィルターは、ブロアと呼ばれる風を吸い込む機械内に設置され、粉塵がブロアに侵入するのを防ぎます。ブロアは高速で回転するため、硬い粉塵が入ると破損の原因となります。2次フィルターは、ブロアを守るために設置され、集塵機の正常な動作を保つ役割があります。
排気フィルター
排気フィルターは、集塵機から排出される空気中の粉塵を捕らえ、外部にまき散らさないようにする役割を果たします。特に微細な粉塵の場合、肉眼では見えないため、排気フィルターは粉塵を効果的に捕らえる必要があります。また、排気フィルターに粉塵が溜まると吸引力が低下するため、定期的な清掃や交換が必要です。
◇いくつものフィルターを設置する理由
1次フィルター、2次フィルターといくつもフィルターを設置するのには理由があります。以下でいくつものフィルターを設置する理由について解説します。
吸引力が落ちる
集塵機の主な役割は、粉塵やごみを吸引し、フィルターでそれらを捕らえることです。しかし、フィルターが粉塵で詰まると吸引力が低下します。こうした吸引力の低下を防ぐために、いくつかのフィルターを段階的に使用します。
一つの高性能なフィルターを使用すると、粉塵が詰まりやすく吸引力が落ちる可能性があります。複数のフィルターを使用することで、吸引力を維持しやすくなります。
ランニングコストが高くなる
一次フィルターは比較的安価で使い捨て可能なものであるため、高級な素材を使用することなく、経済的に交換できます。一方、二次と排気用のフィルターは高品質で耐久性があり、交換頻度が低いため、コストを節約することができます。
もし一つの高級なフィルターだけを使用する場合、それを頻繁に交換する必要が生じ、ランニングコストが高騰します。しかし、段階的なフィルター設計を採用することで、高品質のフィルターを節約しつつ、吸引力を維持できるのです。
形状別・素材別のフィルターの種類
画像出典先:株式会社アコー
フィルターは、さまざまな形状と素材に基づいて設計され、異なるアプリケーションや環境に適応させるために多様な種類が存在します。形状や素材の選択は、集塵機やろ過装置の性能、効率、および耐久性に直接影響を与える重要な要素です。
◇形状別の種類
形状別のフィルターの種類ごとの特徴について、以下で解説します。
円筒型フィルター
円筒型フィルターは最も一般的な形状で、フィルター素材が円筒状に配置されています。この形状は単純で、任意の寸法で製作が容易です。円筒型フィルターは剥離性に優れ、振動などの影響を受けても形状変形が少ないため、集塵効率が高いです。
円筒プリーツ型フィルター
円筒プリーツ型フィルターは円筒型フィルターと比較して、フィルター素材をひだ折に成形したものです。これにより、ろ過面積が大きくなります。全体的にコンパクトな設計で、装置に適しています。ろ過面積が大きいため、効率的な粉塵捕集が可能ですが、剥離性が円筒型フィルターより劣ることがあります。
封筒型フィルター
封筒型フィルターはフィルター素材が平板状に成形されており、ろ過面積を最大限に活用します。全体的にコンパクトな設計で、装置に適しています。ろ過面積が大きいため、特に装置内にスペースが限られている場合に適していますが、剥離性は円筒型フィルターに比べて劣ることがあります。
これらのフィルター形状を選択する際には、集塵機の用途や設置場所のスペース制約などを考慮し、最適な形状を選ぶことが重要です。
◇素材別の種類
ポリエステル、ポリプロピレン、ポリイミドのそれぞれの素材のフィルターについて特徴や用途を解説します。
ポリエステル
ポリエステルフィルターは耐熱性があり、比較的低コストで製造できるため、一般的に使用されています。吸湿性が低いため、湿度が高い環境でも効果的に機能します。また、耐酸性にも優れています。
ポリエステルフィルターは一般的な粉塵集塵アプリケーションに広く使用されます。特に、木工場や金属加工工場などで一般的です。耐熱性があり、多くの粉塵をキャッチできるため、幅広い工業プロセスに適しています。
ポリプロピレン
ポリプロピレンフィルターは軽量で、耐薬品性に優れています。また、比重が低く、酸やアルカリに対して強い耐性を持っています。ただし、耐熱性が他の素材に比べて低いのが欠点です。
ポリプロピレンフィルターは一般的に薬品処理や酸性ガス処理などの特殊な環境で使用されます。また、耐薬品性が高いため、特定の薬品や腐食性のガスを処理するアプリケーションに適しています。
ポリイミド
ポリイミドは非常に高い耐熱性を持ち、有機繊維の中で最も耐熱性が高い素材の一つです。その特性から、高温環境での粉塵集塵に適しています。特に都市ゴミ焼却や高温の工業プロセスで使用されます。
高い耐熱性と耐酸性、耐アルカリ性から、厳しい条件下での集塵に向いています。ポリイミドフィルターは、高温での粉塵捕集が必要なアプリケーションで重要な役割を果たします。
フィルターのメンテナンスの重要性
フィルターの長期間の使用や過酷な条件下での稼働により、劣化や目詰まりが発生します。このため、フィルターの定期的なメンテナンスが非常に重要です。ここでは、その重要性やフィルター交換の目安について詳しく解説します。
◇メンテナンスの重要性
集塵機におけるフィルターは粉塵やごみを収集し、環境を清潔に保つ役割を果たします。しかし、長期間の使用によりフィルターは劣化し、目詰まりが発生します。目詰まりを放置すると、次の問題が発生します。
まず、集塵効率が低下し、粉塵の回収が不十分になります。これにより、工場内の衛生環境が悪化し、製品に粉塵が付着する可能性が高まります。さらに、フィルターの目詰まりは吸引力低下や機械故障を引き起こす可能性があり、設備の安全性に問題をもたらすことがあります。
また、粉塵が従業員の健康に悪影響を及ぼすため、清浄な環境を維持することは従業員の健康保護に不可欠です。最後に、メンテナンス不足は重大事故のリスクを高め、設備への損害を招く可能性があります。
◇フィルター交換の目安
フィルターの交換目安は、集塵機の正常な運転と粉塵収集の効率を保つために非常に重要です。以下のような環境で集塵機を使用すると交換の必要性が高まります。
濾過効率の低下
フィルターの目詰まりや汚れにより、濾過効率が低下します。フィルターが目詰まり状態になると、粉塵の捕集効果が低下し、作業環境の粉塵濃度が上昇する可能性があります。
工場内の粉塵量
集塵機が処理する粉塵の量は、フィルターの寿命に影響を与えます。高粉塵量の環境では、フィルターが早く劣化し、交換の頻度が増えるでしょう。
作業時間集塵機が連続して稼働している場合、フィルターの寿命が短くなることがあります。24時間運転の場合は、定期的なメンテナンスとフィルター交換が必要です。
◇フィルター交換のタイミングの確認
次に、フィルター交換のタイミングの確認方法について解説します。
視覚的なチェック
フィルターの外観を定期的にチェックし、目詰まり、汚れ、損傷があるかどうかを確認します。外観で問題が見られる場合、交換を検討します。
集塵機の吸引力の低下
集塵機の吸引力が低下した場合、フィルターが目詰まり状態にある可能性が高いです。吸引力が明らかに低下した場合、フィルターの交換を検討する必要があります。
粉塵の放散
集塵機から粉塵が放散される場合、フィルターが劣化している可能性があります。放散が見られたら、フィルターの交換を行います。
メーカーの推奨タイミング
集塵機およびフィルターのメーカーの指示に従い、交換のタイミングを確認します。メーカーのガイドラインに従うことで、最適な性能を維持できます。
集塵機のフィルターは、工業プロセスから発生する粉塵や異物を取り除き、クリーンな空気を排出する役割を果たします。異なる形状や素材のフィルターが使用され、それぞれの役割が異なります。
1次フィルターは粉塵を捕らえ、一か所にまとめます。初段階で粉塵を取り除き、後段のフィルターが効率的に機能するために重要です。2次フィルターはブロアを守り、粉塵の侵入を防ぎます。ブロアの保護と正常な動作を維持します。排気フィルターは排出空気中の粉塵を捕らえ、外部にまき散らさないようにします。
複数のフィルターを設置する理由は、吸引力の低下を防ぎ、ランニングコストを削減するためです。異なる形状や素材のフィルターは、特定のアプリケーションや環境に適応し、高い性能を提供します。メンテナンスは重要で、視覚的なチェックや吸引力の低下、粉塵の放散などのサインに従って、フィルターの交換を定期的に行う必要があります。メーカーのガイドラインにも従うべきです。