業務用集塵機の性能を見極めるためには、風量や静圧といった基本的な指標を理解することが重要です。広範囲の粉塵を効率的に集めるには十分な風量が必要ですが、粘着性の高い粉塵には静圧の高さが求められます。
さらに、作業環境に適した機種選定や、フード・ダクトホースの適切な配置も性能を最大限に引き出すポイントです。こちらでは、用途に応じた大型集塵機の選び方について詳しくご紹介します。
目次
集塵機の性能を測る重要な指標
集塵機の性能を示す重要な指標として、風量と静圧があります。風量は広範囲の粉塵を集める能力を、静圧は付着物を吸引する力を表します。これらの特性を理解し、作業環境や粉塵の性質に応じて適切な集塵機を選定することが重要です。
◇風量
風量は、1分間に吸引または排出できる空気の量を示す指標で、「m³/min」という単位で表されます。これは、広範囲に散らばった粉塵や浮遊物を効率よく集める能力を指します。工場全体の空気を浄化するような用途では、特に重要な性能となります。
製造現場で多量の粉塵が空中に飛散している場合、風量の高い集塵機が必要です。風量が不足すると、粉塵が十分に吸引されず、労働環境の悪化や機械トラブルを引き起こす可能性があります。また、風量が高いほど広い範囲をカバーできるため、大型施設や作業エリアが分散している工場では大きな利点となります。
ただし、風量が高ければ良いというわけではありません。粉塵の特性や作業環境に応じた適切な風量設定が必要です。風量を重視して集塵機を選ぶ際は、現場で発生する粉塵の種類や量を正確に把握することが求められます。
◇静圧
静圧は、空気を吸い込む際に発生する圧力を指し、「kPa(キロパスカル)」で表されます。この指標は、付着している粉塵や粘着性のある物質を取り除く能力を示します。掃除機に例えると、静圧の高い集塵機は強力な吸引力で物質を吸い付けるイメージに近いでしょう。
作業台や機械の周辺に付着した細かな粉塵を効率的に吸引するには、高い静圧が必要です。特に粘着性の高い粉塵や重量感のある粒子状物質を処理する場合、静圧が性能を大きく左右します。そのため、細かな作業や高精度が求められる現場では、静圧の高さが重要な要素となります。
また、静圧が高いとダクトホースの長さや曲がりが多い場合でも効率的な吸引が可能です。ただし、静圧が高すぎると風量が低下するため、作業内容に適したバランスを考慮する必要があります。集塵機の選定には、風量と静圧のバランスを作業環境に合わせて最適化することが重要です。
集塵機の吸引力に影響する要素

画像出典:フォトAC
集塵機の吸引力は、単に風量や静圧だけで決まるものではありません。特に、吸引口となるフードの設計やダクトホースの選定は、集塵機全体の効率を大きく左右します。
◇フード
フードは集塵システムの重要な構成要素で、粉塵を効率的に集塵機へ導く役割を果たします。フードの設計は集塵能力に大きな影響を与えるため、慎重に選択する必要があります。主に外付け式と囲い式の2種類があり、それぞれ特性が異なります。
外付け式フードは、汚染源の周囲から広範囲の空気を吸引できる構造が特徴です。しかし、吸引範囲が広いため、必要な風量が多くなる傾向があります。一方、囲い式フードは粉塵の発生源を囲むことで、無駄な気流を抑え、効率的に粉塵を集めることができます。特に作業台や加工機械周辺での使用に適しています。
フードの性能を最大限に発揮させるには、適切な設置位置とサイズの選択が重要です。風量不足が生じると、フードの吸引範囲が狭くなり、粉塵を十分に捕捉できなくなる可能性があります。そのため、計算式を用いて必要な風量を事前に把握し、効率的な設計を行うことが集塵効率向上の鍵となります。
◇ダクトホース
ダクトホースは、フードで吸い込んだ粉塵を集塵機へ搬送する重要な経路です。その選定や配置が集塵システム全体の性能に大きく影響します。特に、適切な搬送速度を維持することが重要で、速度が遅すぎると粉塵の停滞や詰まり、効率低下を引き起こす可能性があります。
搬送速度は風量とダクト断面積から算出されます。軽量な粉塵の場合は比較的低速での搬送で対応できますが、重い粉塵や付着性の高い粉塵では高速搬送が必要となります。また、ダクトの長さや曲がりの数が増えると圧力損失により搬送効率が低下するため、できるだけ短く、曲がりを少なくする設計が推奨されます。
ダクトホースの材質や径も重要な選定ポイントです。例えば、高温環境では耐熱性のあるホースを使用し、粉塵の量に応じて適切な径を選ぶ必要があります。選定ミスを防ぐためには、計算式を活用したり、専門メーカーのアドバイスを受けたりして、現場の条件に最適な仕様を明確にすることが重要です。
【目的別】おすすめの大型集塵機
集塵機の選択は、粉塵の種類や作業環境に応じて行う必要があります。乾いた粉塵にはバグフィルター式やサイクロン式が、高温粉塵には湿式集塵機が適しています。業務用集塵機は、用途に応じた性能を選定することが、作業効率や環境改善に直結します。
◇乾いた粉塵の捕集
乾いた粉塵を効果的に捕集するには、バグフィルター式とサイクロン式の集塵機が主に用いられます。これらは異なる特徴を持ち、用途に応じて使い分けられています。
バグフィルター式集塵機は、ろ布を用いて粉塵を捕集し、清浄な空気を排出する仕組みです。この方式は、微細な粒子の粉塵にも対応可能で、木工や金属加工などの現場で広く利用されています。ただし、ろ布が目詰まりしやすいため、定期的なメンテナンスが必要となります。
一方、サイクロン式集塵機は遠心力を利用して粉塵を分離し、旋回運動中に重力で粉塵を下部に集める仕組みです。構造がシンプルでメンテナンスが容易ですが、微細な粉塵の捕集性能はバグフィルター式に劣ります。そのため、大量の粉塵や比較的粗い粒子を効率的に捕集する環境に適しています。
◇高温粉塵の捕集
高温環境で発生する粉塵の捕集には、湿式集塵機が効果的です。この方式は、水や液体を用いて粉塵を捕集する仕組みで、安全性と効率性が高いのが特徴です。湿式集塵機は、排ガスや粉塵を水と接触させることで捕集を行います。
排気が水槽を通過する際、粉塵が水に溶解または吸収されるため、火災や爆発のリスクが低減されます。そのため、金属加工や溶接現場など、火花が発生する作業環境に特に適しています。また、静電気の発生が抑えられ、騒音が少ないこともメリットの一つです。
湿式集塵機には、主に「ウェットスクラバー方式」と「湿式電気集塵方式」の2種類があります。ウェットスクラバー方式は、水の化学反応や中和作用を利用して有害物質も除去できる特徴があります。
一方、湿式電気集塵方式は静電気を用いて微小な粒子を集めるため、より高精度な捕集が可能です。作業環境や要求される捕集精度に応じて、適切な方式を選択することが重要です。
おすすめの業務用集塵機メーカー
業務用集塵機を選ぶ際には、その性能だけでなく、メーカーの提供するサービスやサポートも重要です。
本章では、特に注目すべき3社「アコー」「アマノ」「住友金属鉱山エンジニアリング」の特徴や製品について詳しく解説します。
◇アコー
アコーは、業務用集塵機を完全オーダーメイドで製造する専門メーカーです。多様な業界での豊富な実績と高い技術力を活かし、各現場のニーズに対応しています。防爆性能を備えた湿式集塵機「ウェットスクラバー」が特に注目されています。
発火性粉塵の集塵やガス吸収、脱臭機能を備えた製品は、安全性と効率性を高いレベルで実現しています。異物分離装置や粉体混合装置も取り扱い、多岐にわたる現場の課題解決に貢献しています。
柔軟な設計対応と多彩な製品ラインナップにより、多業界のニーズに応える信頼性の高いメーカーとして評価されています。
◇アマノ
アマノは、粉体処理や空気輸送装置の分野で長年の実績を持ち、課題の根本解決を目指した総合的なプロデュースが特徴です。粉体性状の分析から設計、施工、メンテナンスまでをワンストップで対応しています。
複数のメーカーから最適な機器を組み合わせる提案力が強みで、クライアントの課題に応じたオーダーメイドのシステム構築が可能です。環境性能や省エネルギーに配慮した設計を行い、運用コストの削減と環境保護に貢献しています。
大型集塵機や特殊用途向け設備設計に対応し、メンテナンス専門のグループ会社による万全のサポート体制で、顧客を支えています。
◇住友金属鉱山エンジニアリング
住友金属鉱山エンジニアリングは、非鉄製錬事業で培った環境技術を基盤に、湿式電気集塵機を中心とした製品を展開しています。微細な粉塵やガス処理において高い集塵効率と省エネ性能を実現し、独自の角筒型構造で長期間安定した性能を維持しています。
間欠荷電技術の採用により、運転コストの削減と環境負荷低減を両立。火災リスクを軽減する安全設計が施された製品を提供しています。排ガス処理設備「スミソーバ」など、多様な製品ラインナップを展開しています。
環境規制への対応と高性能な集塵技術を融合させ、持続可能な社会の実現に向けて強力にサポートしています。
集塵機の性能を測る重要な指標は風量と静圧です。風量は広範囲の粉塵を集める能力を示し、静圧は付着物を吸引する力を表します。これらの特性を理解し、作業環境や粉塵の性質に応じて適切な集塵機を選定することが重要です。
集塵機の吸引力には、フードの設計やダクトホースの選定も大きく影響します。フードは粉塵を効率的に集塵機へ導く役割を果たし、ダクトホースは適切な搬送速度の維持が重要です。
目的別に見ると、乾いた粉塵にはバグフィルター式やサイクロン式が、高温粉塵には湿式集塵機が適しています。業務用集塵機の選定では、用途に応じた性能を選ぶことが作業効率や環境改善に直結します。