大型集塵機と除塵装置の違いとは? 除塵装置の種類も紹介
2024/01/22
大型集塵機と除塵装置は、工業分野における粉塵管理の重要な要素です。除塵は製品保護を主な目的とし、粉塵の除去に焦点を当てます。一方、集塵は環境から粉塵を収集し、作業環境の改善と作業員の安全を確保します。こちらでは、主に除塵装置に焦点を当て、除塵方式や種類についてご紹介します。
除塵と集塵は目的が違う
工業分野における除塵と集塵は、似て非なる重要なプロセスです。その両方が、品質保持と作業環境の改善に欠かせません。製品の品質を高め、作業環境を安全に保つために、それぞれが特有の方法で寄与しているのです。
◇除塵は製品を守る
除塵の主な目的は、製品に付着した粉塵を除去し、製品を守ることです。製造業において重要なのは、製品の品質や精度なのですが、粉塵は製品の表面に付着して、品質を損ないかねません。
特に、電子部品や精密機器、食品製造などの分野では、微細な粉塵の付着が深刻な品質問題を引き起こす可能性もあります。除塵では、エアーブロー、ブラッシング、特殊なフィルターシステムなどにより、製品から粉塵を効果的に取り除きます。これにより、製品の品質を維持し、不良率を低減できるのです。
◇除塵と集塵の違い
除塵と集塵は似ていますが、目的が異なります。除塵が製品から粉塵を取り除くことに重点を置いているのに対し、集塵とは、環境から粉塵を集めるのが目的です。集塵は、作業環境の空気をよくし、作業員の健康や安全を確保します。
工場や作業場では、機械の動作や材料の処理によって粉塵が発生し、作業環境に悪影響を及ぼすことがあるからです。大型集塵機は、エアフィルターやサイクロンシステム、バグフィルターなどを利用して、空気中の粉塵を効率的に捕集し、清浄な空気を保ちます。
除塵方法は粉塵の種類で変わる
画像出典先:フォトAC
工業分野における除塵方法は、粉塵の種類によって大きく異なります。特に、ヒュームとヒューム以外の粉塵では、採用される除塵技術が変わるため、適切な除塵システムを選ばなければなりません。
◇ヒュームかヒューム以外かで変わる
ヒューム(またはフューム)は、化学反応、燃焼、焙焼、蒸留、昇華などの過程で生成される微粒子で、一般的に金属または金属酸化物の形で存在します。その性質や組成は、生成条件や原因物質に依存します。ヒュームは、1 µm以下の非常に細かい粒子であり、粉砕や研摩などの機械的な作用で生成される粒子(ダスト)よりも遥かに微細です。これらの微粒子は、通常、集塵処理が難しい特性を持っています。
ヒュームの代表的な例として、金属製錬の際に発生する金属酸化物があります。また、発煙硫酸などの煙もヒュームと呼ばれることがあります。ヒュームは、一般的には固体粒子であり、粒径が1 µm以下の微小な粒子です。液体粒子で10 µm以下のものは一般的にミストと呼ばれます。
ヒュームやミストは、呼吸時に吸入されると、肺に沈着し、健康問題を引き起こす可能性があるため、適切な除塵処理が必要です。ヒュームに対する除塵方法は、ヒュームの種類や性質に応じて異なります。ヒュームの性質によって除去方法が異なるため、ヒュームとヒューム以外の微粒子に対する除塵方法は異なります。
例えば、金属ヒュームの場合、粒子が非常に微細であるため、特殊なフィルターや集塵装置が必要です。一方、他の粉塵やダストに対する除塵方法は、その粒子の性質に合わせて選択されます。したがって、ヒュームとヒューム以外の微粒子に対する適切な除塵方法を選ぶことが重要です。
◇粉塵がヒュームの場合
粉塵がヒュームの場合、その除塵方式には主に2つの方法があります。それは「濾過式」と「電気式」です。
濾過式除塵
この方法は、一般的なマスクや集塵装置で使用されるものです。粉塵が空気中を漂っているとき、特定のフィルターを通過させることによって物理的に捕集します。フィルターは、微細な穴や繊維から成り、粒子を捉える隙間を提供します。粉塵がフィルターに当たると、そこに留まり、クリーンな空気が通過します。この方法は比較的単純で、粉塵の種類に関係なく使用できますが、フィルターが詰まると定期的な交換やメンテナンスが必要です。
電気式除塵
この方法は、電気的な原理を利用して粉塵を捕集します。粉塵粒子には通常、電荷があります。電気式除塵では、粒子を帯電させ、それを逆極性の電極に吸着させることで粒子を取り除きます。例えば、粉塵粒子がマイナスの電荷を帯びている場合、プラスの電極に引き寄せられます。この方法は微細な粒子やヒュームにも効果的で、フィルター交換の必要がないため、メンテナンスが比較的簡単です。
どちらの方法を選択するかは、環境や粉塵の種類、除去効率などに依存します。濾過式は一般的に広く使用されていますが、特に微細な粉塵やヒュームの場合、電気式除塵が有効であることがあります。
◇粉塵がヒューム以外の場合
粉塵がヒューム以外の場合、除塵には以下の方式が採用されることがあります。
サイクロン式除塵
サイクロン式除塵は、空気中の粉塵を物理的に分離する方法です。この方式は、回転する気流を利用し、粉塵粒子を遠心力で分離・捕集します。粉塵を含む空気はサイクロン内部に導かれ、急速な回転によって遠心力が発生します。この遠心力により、粉塵粒子は壁面に衝突し、そこに留まります。クリーンな空気は中央部から排出されます。サイクロン式は、濾過器を使用しないため、メンテナンスが簡単であり、大型で粗大な粉塵を処理するのに適しています。
スクラバ式除塵
スクラバ式除塵は、粉塵を含んだ空気に液体(通常は水)を噴霧し、粉塵を液体と共に取り除く方法です。粉塵を含む空気はスクラバー内部で水滴と接触し、粉塵粒子が水滴に吸収・捕集されます。結果として、クリーンな空気が排出されます。スクラバーは、粉塵の種類に関係なく効果的に粉塵を取り除くことができ、化学的なプロセスによる除塵にも適しています。
これらの方式は、粉塵の性質や処理量に応じて選択されます。サイクロン式は大型で粗大な粉塵に対して有効であり、スクラバ式は化学的なプロセスで発生する粉塵に適しています。除塵装置は、作業環境を清潔に保ち、健康リスクを軽減するために重要です。粉塵の種類に応じて適切な方式を選び、局所排気装置と組み合わせて使用することが一般的です。
除塵装置は4種類
工業分野における除塵装置は、粉塵や有害物質の除去のために欠かせません。除塵装置は大きく4種類に分類され、それぞれ異なる特性を持ち、特定の状況や要件に適しています。適切な除塵装置を選んで運用することで、作業環境の改善や健康リスクの低減だけでなく、環境保護にも貢献できるでしょう。
◇重力除塵装置と慣性力除塵装置
重力除塵装置と慣性力除塵装置は、両方とも物理的な力を利用して粉塵を捕集します。重力除塵装置は、粉塵そのものの重さにより落下させて捕集するという、シンプルな構造です。一方、慣性力除塵装置は、空気の流れを変更して粉塵を分離します。
重力除塵装置と慣性力除塵装置のメリットは、比較的低コストで設置と運用ができることです。設備費と運転費が抑えられるため、初期投資が限られていたり、簡易的な粉塵除去でよかったりする場合に向いています。
◇遠心力除塵装置
遠心力除塵装置は、空気を高速で回転させて遠心力を発生させ、粉塵を重力により内壁に衝突させて捕集します。この方式の強みは、除去した粉塵が装置の底部に集まるため、回収が容易なことです。特に、粉塵の粒子が大きい場合や、密度が高い場合に向いています。
具体的には、木材加工や金属加工など、粉塵が比較的大きな粒子として発生する作業現場です。しかし、付着性の強い粉塵には適さず、風速が不足すると効率が低下する傾向にあります。適切な風速を維持し、特に付着性の強い粉塵には別の除塵方法を検討するとよいです。
◇濾過除塵装置
濾過除塵装置は、フィルターにより空気中の粉塵を捕集します。この方式は、1ミクロン以下の微細な粉塵まで捕集できるのがメリットです。幅広い種類の粉塵に対応できるため、多くの工場で使用されています。ただし、フィルターの目詰まりや再飛散が問題です。定期的なメンテナンスが必要とし、湿度の高い環境や付着性の強い粉塵には適しません。
工業分野における除塵と集塵は、製品品質の維持と作業環境の安全性向上に寄与する2つの異なるプロセスです。除塵は主に製品保護を目的とし、製品表面の粉塵を取り除いて品質を維持します。一方、集塵は環境から粉塵を収集し、作業環境を改善し、作業員の健康と安全を確保します。
粉塵の種類に応じて除塵方法が異なり、ヒュームとヒューム以外の粉塵に対してそれぞれ適した方式があります。ヒュームの場合、濾過式や電気式が効果的であり、それ以外の粉塵にはサイクロン式やスクラバ式が適しています。
除塵装置は大きく4つの種類に分けられます。重力除塵装置と慣性力除塵装置は、物理的な力を利用して粉塵を除去し、低コストで運用できます。遠心力除塵装置は、大きな粒子に適しており、回収が容易ですが、付着性の強い粉塵には向いていません。濾過除塵装置は微細な粉塵を取り除けるが、フィルターのメンテナンスが必要であり、湿度の高い環境には不向きです。
適切な除塵装置を選び、粉塵の種類や環境条件に応じて運用することは、作業環境の改善と健康リスクの低減に貢献し、環境保護にも寄与します。