集塵機の導入にも関連する大気汚染防止法とは?
公開:2024.06.25 更新:2024.06.25
大気汚染防止法は、日本の大気環境保護と国民の健康保護を目的に1968年に制定され、その後何度も改正を重ねています。法律は、工場や車両からの汚染物質排出を規制し、硫黄酸化物や窒素酸化物などの基準を定めています。
2021年の改正では、新たな建材の規制と作業基準遵守義務の拡大が主な内容で、特定工事や解体工事にも新たな義務が課せられました。企業や事業者はこれらの規制を正確に理解し、届出や対策を適切に行う必要があります。
大気汚染防止法の遵守は、都道府県ごとに異なる上乗せ排出基準を含め、厳格な審査と制裁が伴います。
目次
大気汚染防止法とは
大気汚染防止法は、多くの規制や対策を通じて、日本の大気環境の改善と国民の健康保護を目指しています。以下では、大気汚染防止法の概要と2021年の改正内容を解説します。
◇大気汚染防止法とは
大気汚染防止法は、大気汚染から国民の健康を守り、生活環境を保全するために1968年に制定された法律です。以来、何度も改正が行われています。この法律の目的は、工場や車両などから排出される汚染物質を規制し、大気の質を保つことです。
この法律では、硫黄酸化物、窒素酸化物、揮発性有機化合物、浮遊粒子状物質などの汚染物質に対する排出基準が設定されています。
事業者はこれらの基準を守ることが義務付けられており、汚染物質の排出状況を定期的に測定し、報告しなければなりません。違反した事業者には罰金や事業停止命令などの罰則が科されることもあります。
◇2021年4月に改正
主な改正内容として挙げられるのが、規制対象の拡大と作業基準遵守義務者の拡大です。規制対象の拡大では、これまでの建材に加え、石綿含有成形板等(レベル3建材)を含む新たな建材が規制対象となり、作業計画が義務化されました。
作業基準遵守義務者の拡大では、従来は元請業者のみが対象となっていた作業基準遵守義務が、2021年4月1日以降は下請負人にも拡大されました。
ほかにも、特定工事の元請業者に対する作業報告の義務化、一定規模以上の解体工事を実施する元請業者や自主施工者に対する事前調査報告の義務化などが盛り込まれています。
企業が遵守すべきは大気汚染防止法だけじゃない?
企業や事業者は、大気汚染防止法の規制対象を正確に理解し、適切な対策を講じなければなりません。ここからは、大気汚染防止法の主な規制対象と上乗せ排出基準について解説します。
◇大気汚染防止法の規制対象は多岐に渡る
大気汚染防止法の規制対象は非常に広範囲に渡ります。以下では、ばい煙、粉じん、揮発性有機化合物など、主な規制対象について解説します。
・ばい煙
ばい煙とは、工場や発電所などの燃焼装置から排出される煙やすすのことです。これには、硫黄酸化物や窒素酸化物などが含まれ、発生源となる工場や施設に対して厳しい規制を行っています。
・粉じん
粉じんとは、空気中に浮遊した粒子状の物質のことです。工場での作業や建設工事などで発生する粉じんは、呼吸器系の病気を引き起こす可能性があります。
・揮発性有機化合物(VOC)
揮発性有機化合物とは、石油製品や化学製品から放出される有機化合物で、大気中で反応して光化学オキシダントやスモッグの原因となります。
◇上乗せ排出基準にも注意
上乗せ排出基準とは、大気汚染防止法における一般的な排出基準だけでなく、社会的・環境的な条件を加味して都道府県ごとにより厳しい排出基準を定めることを可能とするものです。
これらの基準は、特に汚染が深刻な地域で適用され、上乗せ排出基準に違反した場合、法的な制裁が科されることがあります。
対象施設は届出が必要
大気汚染防止法の対象となる施設を設置する際には、事前の届出が必要です。事業者は規定に従い、適切に手続きを進めることが求められます。
◇建設前60日以内
施設の設置を計画している事業者は、建設開始の60日前までに届出を行わなければなりません。この届出は、事前に行政側に対して計画内容を知らせ、法的基準を満たしているかどうかの確認を受けるために必要です。
提出すべき書類の様式や提出先は各市区町村の公式サイトで確認できます。また、地域によっては書類の一部を電子申請でき、手続きを簡略化できます。
◇集塵に関する情報を届出書類へ記載
届出書類の中でも、「一般粉じん発生施設設置届出書」は特に重要です。この書類には、粉じんの発生を防止するための具体的な対策を記載する必要があります。
例えば、集じん機の種類や機能、その集塵効率、設置場所、運用方法などを詳細に説明しなければなりません。行政側はこれらの情報をもとに、施設の設置が法令に適合しているかを審査します。
大型集塵機で大気汚染防止法を遵守
大気汚染防止法を守るために使用される大型集塵機にはさまざまな種類があります。以下では、大型集塵機の主な種類と特徴を解説します。
◇バグフィルター
繊維性のフィルターを通して空気をろ過し、粉じんを捕集する装置です。空気中の微粒子がフィルターに捕捉され、清浄な空気が排出されます。定期的なフィルター交換が必要ですが、高い捕集効率を持っています。
◇サイクロン
遠心力を利用して粉じんを分離する装置です。気流を旋回させることで、重い粉じん粒子を外側に押し出し、壁面に沿って落下させます。メンテナンスが比較的容易で、高温や高湿度の環境でも使用できますが、微細な粒子の捕集効率は低いです。
◇スクラバー
液体を使って空気中の粉じんやガスを洗浄する装置です。気体が液体と接触することで、汚染物質が液体に溶解または捕捉されます。ガス状の汚染物質の除去にも効果的ですが、液体の排水処理が必要となります。
◇電気集塵機
高電圧をかけて粉じん粒子に電荷を与え、集塵板に引き寄せて捕集する装置です。非常に高い捕集効率を持ち、微細な粒子にも対応できます。初期投資は高めですが、ランニングコストは最も低く、保守性も高いのが特長です。
大気汚染防止法は、日本の大気環境保護と国民の健康保護を目的に1968年に制定されました。以来、工場や車両からの汚染物質排出を規制し、硫黄酸化物、窒素酸化物、揮発性有機化合物などの排出基準を定め、大気の質を保つための枠組みを提供しています。
2021年の改正では、特に建材の規制と作業基準遵守義務の拡大が注目されました。新たにレベル3建材(石綿含有成形板など)が規制対象に加わり、事業者はこれらの材料を使用する際には作業計画の届出が必要です。また、解体工事や特定工事においても、事前調査報告の義務が課されました。
企業や事業者にとって、大気汚染防止法の遵守は法的な義務だけでなく、社会的責任も含みます。地域ごとに異なる上乗せ排出基準にも対応し、厳格な審査と罰則を避けるためには、正確で適切な届出と対策が不可欠です。この法律の適用範囲は広く、ばい煙や粉じん、揮発性有機化合物など、多岐にわたります。
特に粉じん発生施設の設置では、集じん機の選定や運用方法など具体的な計画が求められます。大気汚染防止法を遵守するための技術的な解決策として、バグフィルターやサイクロン、電気集塵機などの大型集塵機が使用され、それぞれの特性に応じた効率的な粒子捕集が行われています。