大型集塵機における圧力損失の重要性と計算方法について
公開:2024.02.20 更新:2024.10.07
圧力損失は集塵機の効率とコストに影響し、流体の摩擦や抵抗で圧力が低下します。これを減少させることでエネルギー効率が向上し、運転コストを削減できます。各集塵機タイプによって圧力損失の特性が異なるため、設計や運用において適切な計算と対策が重要です。
目次
大型集塵機と他の集塵機の違い
画像出典:流機エンジニアリング
ここでは大型集塵機と他の集塵機の違いについて解説していきます。
ダクト配管工事
工場におけるダクト配管工事には、1台から複数に分岐させる際に必要な作業が含まれます。例えば、3つの生産ラインにダクトを分岐させる場合、ダクトを枝分かれさせることが一般的です。
この方法は、工場外に設置することができ、騒音問題や作業スペースの圧迫を防ぐために重宝されます。ただし、工事費用が高額になる点が欠点です。一方、小型集塵機を各ラインに設置する方法もあります。
この場合、配管工事は不要で、集塵機が到着次第、すぐに使用できます。この方法も工場外に設置可能で利便性が高い反面、コストがかかる点がデメリットです。両者の選択は、工場の状況や予算などを考慮して検討することが重要です。
吸引圧力
集塵機の選定において重要なポイントは、静圧と風量のバランスです。静圧が強くなれば風量は下がり、逆もまた然りです。吸引圧力を重視する場合、小型集塵機が適しています。小型機は異物集塵に適しており、静圧も大型機に比べて高い傾向があります。
一方で、大型集塵機は風量が豊富で、換気や切削、溶接作業などに適しています。ただし、ダクトに分岐させる場合は圧力が半減するため注意が必要です。生産ライン内の異物を取り除く際は、吸引圧力が重要となります。
そのため、作業場ごとに小型の高圧型集塵機を設置するのが効果的です。使用シチュエーションに応じて、適切な集塵機を選定することが重要です。
微調整
工場の外に超大型の集塵機を置いて、そこからダクト配管で作業場まで持ってくる方式を採用している工場は非常にたくさんあります。この方式は、設置スペースに無駄がなく、作業者にとって使い勝手が良いだけでなく、集塵機から発生する騒音を減らすことができます。
しかし、微調整が難しいというデメリットも存在します。主に2つの難点があります。まず、配置の調整です。ダクト工事を行う際に、配管の先端をどこに持ってきて、どのようなルートで集塵機まで繋ぐかを予め決めておく必要があります。
数年後に工場内の配置を変更したくなった場合、ダクトを延長するなどの面倒な工事をしなければ位置を変更することができません。集塵機の風量微調整は重要な作業です。製造ラインごとに風量を微調整したい場合、元の集塵機では1つの集塵機で複数のダクトに接続されているため、1本だけを調整するのは難しいです。
調整自体は可能ですが、手間がかかります。一方、小型集塵機はキャスターが付いており、簡単に移動できます。さらに、集塵機本体から風量の調整が可能で、ラインごとの微調整が容易です。
このように、小型集塵機は操作性が高く、効率的な集塵作業が行えると言えます。集塵機の改善により、作業効率や環境整備にも良い影響を与えることが期待されます。
電源電圧
小型の集塵機は100V単相と200V三相の両方の種類がありますが、大型の集塵機は200V三相のみの場合が多いです。集塵機は工業現場や木工所などで粉じんや切りくずを吸引して清潔な環境を保つために使用されます。
小型の集塵機は、電源が100V単相や200V三相のどちらでも選択できるため、設置場所や使用状況に合わせて選択することができます。一方、大型の集塵機は主に200V三相の電源を使用するため、工業用途や大規模な作業場に適しています。
大型の集塵機は、集塵能力が高く、多くの粉じんや切りくずを効率的に吸引できる特長があります。また、大型の集塵機は故障した場合、生産ライン全体に影響を及ぼす可能性があるため、定期的なメンテナンスや点検が重要です。
故障した時
集塵機の故障は生産ラインに大きな影響を及ぼす可能性があります。小型集塵機が故障した場合、そのラインのみに影響が出るため、他のラインは稼働可能です。しかし、大型集塵機が故障すると、ダクトで繋がっている全てのラインに影響が及びます。
大型集塵機は予備を用意することが難しいため、故障時には数日間複数の生産ラインが停止するリスクがあります。このようなリスクを軽減するためには、適切なメンテナンスや故障時の対応策を検討する必要があります。
生産ラインの安定稼働のためには、集塵機の適切な管理が欠かせません。
圧力損失
基本的に、集塵配管はL字に曲げるか、極端に集塵機から離れた場所に設置すると、圧力損失が生じます。この圧力損失は、集塵機の性能や効率に影響を及ぼす重要な要素です。そのため、配管のレイアウトや設置には慎重さが求められます。圧損計算を誤って行ったり、後付けで配管を追加すると、思うような集塵能力を発揮できなくなる可能性があります。
一方で、製造ラインの横にベタ付けできる小型集塵機を使用する場合は、圧力損失などをあまり気にする必要がありません。このような小型集塵機は、効率的に集塵を行うことができるため、配管の設置場所や形状による影響を比較的受けにくい特長があります。
圧力損失とは?集塵機における圧力損失の重要性
圧力損失は集塵機の効率やコストに影響し、これを減らすことで運転コストの削減と集塵効率の向上が可能です。
◇大型集塵機における圧力損失の重要性
圧力損失とは、流体が管や機器を通過する際に、摩擦や抵抗によって圧力が低下する現象のことです。流体の種類や密度、流速、管の長さや径、曲げや継ぎ手の数などによって変化します。圧力損失を減らすことで、エネルギー効率を向上させることができます。
集塵機は、空気中のほこりや粒子を除去するために使用され、工場や事務所などで空気環境の改善に広く利用されています。集塵機の性能を評価する上で重要な指標の一つに圧力損失があります。これは、集塵機に入る前と出た後の圧力差を指し、集塵機の効率やコストに大きな影響を与えます。
圧力損失が大きいと、必要な動力が増えるため運転コストが高くなり、吸引力の低下によって集塵効率が落ちます。また、フィルターが目詰まりしやすくなり、メンテナンスの頻度も増えることになります。
圧力損失を減らすことで、集塵機の効率を向上させることができますが、そのためには、集塵機の特性に合わせた適切な圧力損失の計算が必要です。
集塵機の圧力損失が性能に与える影響とその対策
画像出典:ミヤタテクニカル
風量型集塵機は大風量で微粒子を吸い込み、広がったほこりに効果的です。一方、高圧型集塵機は小風量で強力に吸引し、濃縮された微粒子に適しています。圧力損失が小さいと風量型が有利で、圧力損失が大きいと高圧型が優れています。選択時には、圧力損失を考慮し、適切な設計が必要です。
◇風量型と高圧型
風量型の集塵機は、大きな風量で微粒子を吸い込むタイプです。吸引口が大きく、吸引力は比較的弱めですが、微粒子が薄く広がっている場合に効果的です。木工や金属加工などで発生するほこりや煙の除去に適しています。
一方、高圧型の集塵機は、少ない風量で微粒子を吸い込むタイプです。吸引口が小さく、吸引力が強いのが特徴で、微粒子が濃縮されて局所的に集まっている場合に効果的です。溶接や切断作業で出るスパークやスラグの除去に向いています。
◇それぞれの集塵機と圧力損失に対する影響
高圧型集塵機と風量型集塵機の性能は、圧力損失によって異なります。圧力損失が小さい場合、風量型集塵機は風量が大きくなります。これは、圧力損失が少ないことで、風量をより効率的に確保できるからです。
逆に、圧力損失が大きい場合は、高圧型集塵機が風量を大きくできるのは、圧力損失に対して効率よく対応できるためです。
風量型集塵機を使う際は、圧力損失を減らすために、吸引口を大きくし、配管の長さや曲がりを減らし、フィルターの目詰まりを防ぐ必要があります。一方、高圧型集塵機を使う際は、吸引口を小さくし、吸引距離を短くし、吸引部分を密閉する対策が効果的です。
集塵機を選ぶ際には、吸引方式に応じた圧力損失を考慮することが重要です。微粒子の特性や発生状況に合わせて、適切な集塵機を選ぶことで、性能を最大限に引き出すことができます。
集塵機の圧力損失を最小限にする方法
画像出典:新東工業
正しい圧力損失を知ることは、集塵機の選定や、風量を把握するための重要な指標となります。ここでは、先ほど紹介しきれなかった集塵機の圧力損失の影響と、計算方法について解説します。
◇それぞれの集塵機と圧力損失
電気集塵機は、高電圧の電極と接地された集塵板の間で空気を通し、ほこりや粉末に電荷を与えて集塵板に吸着させる装置です。このタイプは圧力損失が小さく、粒子の大きさに関係なく高い集塵効率を持っていますが、電極の汚れや火花放電の問題があります。
サイクロンは、円筒形の部分と円錐形の部分から構成されており、空気を渦巻き状にして遠心力でほこりや粉末を分離します。圧力損失は中程度で、大きな粒子に対して高い集塵効率を発揮します。構造がシンプルで、耐久性や安全性も高いです。
慣性集塵機は、空気中のほこりや粉末を直線的に流れる空気に対して垂直に配置された障害物にぶつけて分離します。このタイプは圧力損失が小さく、大きな粒子に対して高い集塵効率を持ちますが、障害物が汚れやすく詰まりが問題になることがあります。
バグフィルタは、空気中のほこりや粉末を繊維製の袋やカートリッジに吸着させる装置です。圧力損失が大きく、粒子が小さいほど高い効率を発揮しますが、隔壁の交換や清掃が頻繁に必要です。
◇集塵機の圧力損失の計算方法
ここでは、サイクロン集塵機の圧力損失の計算方法を例に説明します。
入口速度の計算
入口面積aとサイクロン直径Dから、viという入口速度を計算します。これは、円筒部への流入速度です。入口面積と直径の関係によって、viの値が決まります。
円筒部での速度変化
円筒部を通過すると、流速は加速または減速します。摩擦係数と円筒部内壁面積を用いて、円筒部での速度の減少率を計算します。これにより、入口速度viから円筒部での速度v1が求められます。入口面積と直径の関係によって、v1/viの比率が決まります。
円錐部での速度変化
円筒部を通過した後、流体は円錐部へと移動します。この過程で、流速はさらに減速し、求心流が発生します。この段階での速度をv2とします。
圧力損失の計算
圧力損失は、サイクロン内部の流れの速度変化や形状によって決まります。摩擦係数や流れの指数などのパラメータを使って、圧力損失を算出します。また、出口管の壁面上静圧Peと入口管静圧Piの差からも圧力損失を計算することができます。
特殊な要因の考慮
サイクロン内部に案内羽根を設置したり、特殊な型式を採用することで圧力損失が低減する場合があります。また、ガス中の粉末濃度が高くなると圧力損失が上昇する傾向があります。
おすすめメーカー2選
画像出典:日本集塵
ここでは大型集塵機におけるおすすめのメーカーを紹介していきます。
4.1 株式会社アコー
株式会社アコーは、独自の空気利用技術により、集塵、ガス吸収、脱臭、異物分離、粉体と液体の混合の分野で幅広い納入実績を誇る企業です。同社は、高効率フィルターを使用した「エアショックバグフィルター」や水を使った「ウェットスクラバー」、そして旋回気流による「マルチサイクロン」といった、全9種類の集塵装置を取り扱っています。
これらの製品は、静岡県磐田市にある3つの自社工場で一から製造されています。そのため、顧客の要望に細やかに応えることが可能であり、既製品では困難な悩みをオーダーメイドの集塵機によって解決してくれます。
要望をくみ取り、磐田市の自社工場に連携して製品を生み出すため、通常のメーカーでは対応しきれない細かな要望にも柔軟に対応できる体制を整えています。さらに、アコーの最大の特長は、完全受注生産かつ自社内一貫生産である点です。
千葉、静岡、大阪の3ヶ所に営業所を有し、豊富な知識と技術を持つ経験豊富な営業技術スタッフが、直接顧客様のご要望や困り事に応えてくれます。そして、各顧客の仕様や状況を詳細に確認し、理解した後に独自のアイデアを取り入れた機器を提案しています。
顧客の悩みを理解したうえでカスタマイズして製造を行うため、通常の既製品では難解とされる問題を解決へと導いています。
少しでもお悩みを抱えている方は、一度アコーへ問い合わせてみてはいかがでしょうか?
株式会社流機エンジニアリング
株式会社流機エンジニアリングは、集塵機の開発と提供で業界をリードしています。独自のフィルター技術を活かし、既存の集塵機のカスタマイズや特殊な環境に対応した集塵機の提供が得意です。
フィルターの自動再生技術や高い浄化性能、省スペース設計などの技術力を持ち、高性能でメンテナンスも簡単な集塵機を提供しています。これにより、お客様は効率的に環境を清潔に保つことができ、生産性向上にも貢献しています。
この会社の集塵機は、航空・宇宙、原子力、粉・流体、工業用分野など幅広い分野で活躍しており、多くの実績を積み重ねてきました。また、豊富なレンタル製品とデモンストレーションも行っており、お客様が自社のニーズに合った最適な集塵機を選ぶことができるようサポートしています。
株式会社流機エンジニアリングは、常に技術力の向上とサービスの充実に努め、お客様の期待に応えることを使命としています。
本記事では、集塵機の圧力損失に付いて解説をしました。
流体の摩擦や抵抗による圧力低下を減少させることでエネルギー効率が向上し、運転コストを削減できます。各集塵機タイプによって圧力損失の特性が異なるため、設計や運用において適切な計算と対策が重要です。
また、集塵機に関するお悩みを抱えている方に向けて、おすすめのメーカーも紹介しました。
この記事が少しでもあなたの力になりましたら幸いです。