湿式スクラバー(洗浄式集塵機)とは?メリット・デメリット
2023/11/28
湿式スクラバー(洗浄式集塵機)は、有害なガスや粉塵を取り除く装置です。メリットは高い除去効率と多様な汚染物質への対応能力ですが、デメリットとして初期投資やメンテナンス費用が高く、運用コストがかかり、スペースの制約も考慮する必要があります。
湿式スクラバーは環境保護と労働者の健康を守るために重要な役割を果たします。適切な設計と運用計画を立てることが不可欠です。
湿式スクラバー(洗浄式集塵機)とは?
湿式スクラバー(洗浄式集塵機)は、産業分野で頻繁に利用される空気清浄装置のひとつです。その仕組みや特徴について解説します。
◇湿式スクラバー(洗浄式集塵機)とは?
湿式スクラバー(洗浄式集塵機)は、ガスや粉塵などの微粒子を含む排気ガスを浄化するための装置です。これは一般的に、化学工場や工業プロセスなどで発生する有害なガスや粉塵を取り除くために使用されます。以下は、湿式スクラバーの主な特徴です。
有害ガスを中和吸収できる
湿式スクラバーは、排気ガス中に含まれる酸性ガスやアルカリ性ガスに対して有効です。洗浄液を使用してこれらの成分を中和し、吸収できます。
耐食性に優れる
有害ガスといってもその種類はさまざまです。特に水溶性の有機溶剤ガスに対処する場合、化学薬品に対して耐食性のあるステンレス製の湿式スクラバーが使用されます。
FRP製なら大風量のガス処理も可能
FRPとは、繊維強化プラスチックの略称です。FRP製の湿式スクラバーは軽量かつ高い耐久性・耐薬性・耐食性があり、また大型で高風量のプロセスにも対応できるため、さまざまな産業で使用されています。
◇湿式スクラバー(洗浄式集塵機)の仕組み
湿式スクラバーで、排ガスを浄化する方法は主に「物理吸収」「科学吸収の」2つがあります。
物理吸収
排ガスを水に溶かすことによって有害成分を取り除く方法(湿式スクラビング)です。排ガスを湿式スクラバーに通すと、水が有害成分と反応して吸収し、浄化されたガスが出力されます。
化学吸収
中和反応や化学反応によって有害成分を分解・吸収する方法です。例えば、酸性ガスを取り除く場合、アルカリ性水溶液(水酸化ナトリウムなど)を循環タンク内に入れて中和反応を発生させ、有害成分を無害な物質に変えて浄化します。
◇湿式スクラバー(洗浄式集塵機)のメリット・デメリット
湿式スクラバーの主なメリット・デメリットは以下になります。
メリット
湿式スクラバーの大きなメリットは、酸性ガス、アルカリ性ガス、水溶性の有機溶剤など、さまざまな種類の汚染物質に対応でき、高い除去効率で有害ガスを除去できるということです。有害ガスを除去することで、環境への悪影響を軽減するだけでなく、その場所で働く従業員の健康と安全性を向上させることが期待できます。
湿式スクラバーは、その柔軟な設計によりさまざまな産業プロセスに適応でき、多様な異なる条件に対応できる点も大きなメリットです。
デメリット
湿式スクラバーは専門性の高い複雑な設備であるため、初期投資やメンテナンス費用に加えて運用コストがかかることがあります。特に大型集塵機の場合、スペースを取ることも懸念されるデメリットです。
設備を置く工場や事業所のエリアについても注意が必要です。有害物質の排出規制は地域ごとに異なる可能性があるため、これに対応するためには追加のコストがかかる可能性があります。
おすすめの湿式スクラバー(洗浄式集塵機)を紹介!
同じ湿式スクラバーであっても、性能、除去効率、メンテナンス性などさまざまな要素に違いがあります。ここでは、より高性能なおすすめの湿式スクラバーをご紹介します。
◇NWシリーズ「NW-OP型」(株式会社協立製作所)
株式会社協立製作所が提供しているNWシリーズ「NW-OP型」は、スタンダードな縦型の湿式スクラバーです。NW-OP型は、すべての接ガス部が耐蝕性に優れた硬質塩化ビニールで構成されています。酸やアルカリ性のほか、ガスや60℃以上の高温ガスにも対応できます。柔軟性があり、設置スペースに合わせて寸法やレイアウトを変更できる点も特長です。
除害できる物質の例としては、酸性ガス、アルカリ性ガス、臭気ガス、ミスト、粉塵などが挙げられます。
◇湿式集塵機「SS-N」(アマノ株式会社)
アマノ株式会社が販売する湿式集塵機「SS-N」は、溶接作業、レーザ加工、および火災リスクを伴う集塵に適しています。通常のフィルター式では燃えやすい危険な粉体も、安全に集塵できるのが特長です。水位調節と給水の自動システムの採用しており、溶接時の粉塵の除去効率は90%以上と高い性能を誇ります。
◇ウェットスクラバー(株式会社アコー)
株式会社アコーの販売するウェットスクラバーは、シンプルでありながらも非常に安定した運転が魅力の湿式スクラバーです。フィルターやデミスターがほとんどないため、風量が低下することなく効率的に作動します。また集塵効率は抜群で、シングルスクラバーは8μm粒子を100%、ダブルスクラバーは1μm粒子を99%捕集します。
主な用途は、吸湿性粉塵の集塵、高温排ガスダストの集塵、発火・爆発性粉塵の集塵、有毒ガス・悪臭ガスの吸収、酸やアルカリの中和などです。
◇全自動集塵機フィルター洗浄装置「CLE101」(丸善工業株式会社)
丸善工業株式会社の「CLE101」は、全自動型の集塵機フィルター洗浄装置です。自動洗浄機能が搭載されており、フィルターをセットしたのちにボタンを押すだけで、洗浄作業は完全に自動で行われます。さらに、洗浄後のフィルターは水を使用せずにエアーだけでクリーニングされるため、即座に再利用可能です。
粉塵の回収も徹底しており、洗浄で発生したフィルターの余分なゴミ埃は完全に回収されます。
湿式スクラバー(洗浄式集塵機)は、産業分野で広く使用される空気清浄装置で、有害なガスや粉塵を取り除くために利用されます。主な特徴は、有害ガスの中和吸収能力、耐食性、FRP製での大風量処理への適用があります。
湿式スクラバーの仕組みには物理吸収と化学吸収の2つの方法があり、排ガス中の有害成分を水により取り除くか、化学反応によって中和させます。メリットは多種多様な汚染物質に対応できる高い除去効率と、柔軟な設計が可能なことです。一方、デメリットは高コストと設置スペースの要件です。
株式会社協立製作所のNW-OP型湿式スクラバーは、硬質塩化ビニールで作られており多様な物質を効率的に除去します。アマノ株式会社のSS-Nは、溶接やレーザ加工などで発生する粉体を安全に集塵するための装置です。自動水位調節と給水システムを備え、高い粉塵除去効率を誇ります。
株式会社アコーのウェットスクラバーは、シンプルながらも安定した運転性能を持つ湿式スクラバーです。フィルターやデミスターが少ないため風量低下が少なく、粒子捕集率が高い特長があります。丸善工業株式会社のCLE101は、全自動型の集塵機フィルター洗浄装置で、自動洗浄機能を備えています。
これらの湿式スクラバーは、異なる用途や要件に応じて選択できる高性能な装置です。