オイルミストが人体や労働環境に与える影響とは?電気式集塵機の利点を解説
2024/04/19
オイルミストは産業現場で発生し、作業者の健康や労働環境に深刻な影響を及ぼす可能性があります。呼吸器系や皮膚への影響、作業環境の安全性への悪影響などが挙げられます。これに対し、電気式集塵機は静電気を利用して微粒子を吸着し、高い除去効率が期待できます。また、フィルター交換等が不要で廃棄物が少なく、環境への優しさを実現します。
オイルミストの概要と発生原因
オイルミストは、産業現場や工場などでよく見られる微細な液体粒子の一種であり、加工作業に伴って発生します。切削や加工工程において使用される切削油や潤滑油が高速で回転する機械部品と接触すると、微細な液体粒子が空中に散乱し、オイルミストとして形成されます。では、オイルミストの発生原因を見てみましょう。
◇オイルミストとは
オイルミストは、工場や生産現場などでよく見られる微細な液体粒子の一種です。工作機械が高圧化・高速化される現代では、主に不水溶性切削油や水溶性切削油の使用によって発生します。
オイルミストは、切削油が加工点に吐出されたり、工具やワークの回転によって飛散するなど、物理的な要因によって発生します。これにより、空中に微細な油の粒子が浮遊し、目に見えない状態で空気中に拡散します。
オイルミストと似た言葉に「油煙」がありますが、発生要因が異なります。油煙は加工熱によって燃焼された油剤成分が空気中に浮遊したものを指します。
◇オイルミストの発生原因
オイルミストの発生原因にはいくつかの要因があります。一つ目は、機械や装置の運転時に生じる摩擦や熱によって、潤滑油や冷却油が気化し、微細な粒子として拡散することです。
二つ目は、加工工程において使用される加工液が高速回転部分や高温部分に飛散し、微細なオイルの粒子として発生することです。その他にも、機械の老朽化やメンテナンス不良、使用される油の種類や粘度、作業環境の温度や湿度なども影響を与える要因です。
オイルミストが発生すると、作業環境や機械の精度に影響を与えるだけでなく、作業者の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。
オイルミストによって引き起こされる様々な危険
画像出典先:フォトAC
オイルミストは、作業環境や作業者の健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、オイルミストが生じることは重要な問題です。では、オイルミストによって引き起こされる様々な危険について見ていきましょう。
◇人体への健康リスク
オイルミストが人体へ与える健康リスクは大きく分けて呼吸器系への影響と、皮膚への影響があります。以下でそれぞれ詳しく解説します。
呼吸器系への影響
オイルミスト中に含まれる微小な粒子が肺に到達し、気道や肺胞に蓄積されることで、気管支炎や肺炎などの呼吸器疾患を引き起こすリスクがあります。また、慢性的な暴露により、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気管支拡張症などの慢性呼吸器疾患の発症リスクも増加します。
皮膚への影響
長時間の接触や霧状のオイルミストにさらされると、皮膚に刺激を引き起こす可能性があります。特に、一部の化学物質を含むオイルミストは、皮膚にアレルギー反応や湿疹を引き起こすことがあります。
◇作業環境を悪化させるリスク
オイルミストは人体への健康リスクだけでなく作業環境悪化にも繋がります。悪い作業環境下では事故やケガの原因になる他、意欲低下にも繋がります。
作業環境の安全性への影響
オイルミストが空気中に拡散すると、作業場の視界が悪化し、機械や設備の部品が滑りやすくなるなど、作業環境の安全性が低下します。これにより、事故や怪我のリスクが増加します。
労働者の快適性への影響
オイルミストは作業場の空気中に不快な臭いを発生させる場合があります。また、高温の機械部品から発生するミストは、作業者の体温調節を困難にすることがあります。これにより、作業効率や快適性が低下します。
◇設備等への影響
最後に設備等への影響について解説します。
機械の劣化
オイルミストが機械や設備の表面に付着すると、部品の摩耗や腐食を引き起こす可能性があります。特に、高温の機械部品に付着したオイルミストは、劣化が加速される傾向があります。
機械の故障リスク
オイルミストが機械や設備の内部に侵入すると、潤滑油や冷却油が汚れてしまい、機械の正常な動作を妨げる可能性があります。これにより、機械の故障や停止が発生するリスクが高まります。
ミストコレクターでオイルミスト対策
ミストコレクターは、工場や加工施設などの産業現場で使われる装置です。その役割は、オイルミストや冷却液ミストなど微細な液体粒子を除去することです。これらの微細な粒子は、作業環境や作業者の健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、ミストコレクターは重要です。
ミストコレクターには、フィルターが装備されています。これらのフィルターは、高性能な材料で作られており、微細な粒子を効果的に捕集します。また、ミストコレクターにはファンが組み込まれており、空気を吸引してフィルターを通過させます。こうして空気中のミストがフィルターに集められます。最終的には、排出口からは微細な粒子が除去されたクリーンな空気が放出されます。
ミストコレクターを使うことで、作業環境の空気品質が改善され、作業者の健康リスクが軽減されます。特に、切削油を使用する加工の場合に有効です。
◇ミストコレクターの種類
ミストコレクターは、補修方法や用途の異なる様々な種類が存在します。以下でその中でも代表的な機器について解説します。
フィルター式ミストコレクター
フィルター式ミストコレクターは、オイルミストや微粒子をフィルターで捕集する方式です。空気中の微細な粒子がフィルターに衝突し、フィルター表面に付着することで除去されます。フィルターは定期的に清掃や交換が必要ですが、比較的低コストで効果的にミストを除去できます。
遠心分離式ミストコレクター
遠心分離式ミストコレクターは、遠心力を利用してオイルミストや微粒子を除去する方式です。排気ガスが高速回転するディスクや円筒内を通過することで、微粒子が遠心力によって壁面に衝突し、除去されます。この方式は高効率で、フィルターの交換が必要ないためメンテナンスが容易です。
電気集塵式ミストコレクター
電気集塵式ミストコレクターは、静電気を利用して微粒子を除去する方式です。排気ガスが通過する際に、電荷を帯びたコレクターに微粒子が付着し、電気的な引力によってコレクターに吸着されます。この方式は高い除去効率を持ち、特に微粒子が非常に小さい場合に有効です。
電気式集塵機は繰り返し使用が可能で環境に優しい
電気式集塵機は、その特性から繰り返し使用が可能であり、また環境にも優しい装置です。その仕組みや機能を理解することで、その利点がより明確になります。
◇電気式集塵機の仕組み
電気式集塵機(電気集塵式ミストコレクター)の仕組みは、静電気の力を利用して微細な粒子やオイルミストを除去する方式です。
電気式集塵機では、高電圧をかけた電極と接地された集塵板(コレクター)を配置します。高電圧がかかった電極から放電が発生し、その結果、電極周囲に静電気場が形成されます。
排気ガス中に含まれる微細な粒子やオイルミストは、電極から発生した静電気場に通過する際に帯電します。微粒子が帯電することで、その周囲に電荷が生じます。
帯電した微粒子は、静電気的な引力によって集塵板に引き寄せられます。集塵板は通常、地面に接続されているため、微粒子は集塵板に吸着されることで排気ガスから除去されます。
集塵板に吸着された微粒子は、定期的に清掃することで除去されます。清掃時には、集塵板から微粒子を落とすためのメカニズムが用意されています。これにより、集塵板の効率的な再利用が可能となります。
◇高い捕集効率で環境にも優しい
電気式集塵機は静電気を利用して微細な粒子を吸着し、集塵するため、非常に高い捕集効率を実現します。微細なオイルミストや加工液の粒子を効率的に除去することができます。
また電気式集塵機は、化学薬品やフィルターの交換などの特殊な処理が必要ないため、廃棄物が少なく環境に優しいと言えます。また、使用中に排出されるガスや排気物の量も少ないため、周囲の環境への影響が軽減されます。
さらに、電気式集塵機は電気を動力源としているため、燃料の燃焼やエネルギーの損失がなく、エネルギー効率が良いと言えます。これにより、運転コストを抑えながら効率的にオイルミストを除去することができます。
オイルミストは産業現場でよく見られる微細な液体粒子で、切削油や潤滑油が加工作業によって空中に拡散されます。その発生原因は、機械運転時の摩擦や加工工程における加工液の飛散などです。
オイルミストは作業環境や健康に悪影響を及ぼす可能性があり、呼吸器系や皮膚への影響、作業環境の安全性への悪影響などが挙げられます。これらのリスクを軽減するために、ミストコレクターが使用されます。
ミストコレクターは、フィルター式、遠心分離式、電気集塵式などの種類があり、特に電気式集塵機は高い補修率と環境への優しさが特徴です。電気式集塵機は静電気を利用して微細な粒子を吸着し、高い除去効率と低い運転コストを実現します。