ウェットスクラバーを導入する際は凍結対策も重要!メンテナンスや凍結対策
2024/05/07
ウェットスクラバーは排ガス中の有害物質を洗浄液に通して吸収し、多様な物質に対応できます。ただし、凍結対策が必要であり、メンテナンスも重要です。寒冷地では装置内水の凍結を防ぐために保温措置が必要であり、メンテナンスが怠ると有害ガスの除去率が低下する可能性があります。また、寒冷地では雪の影響も考慮する必要があります。
ウェットスクラバー(湿式集塵機)の仕組み
◇ウェットスクラバーとは
ウェットスクラバーとは、洗浄集塵装置、湿式集塵機などとも呼ばれる大型集塵機です。ウェットスクラバーの集塵方式は、排ガスを洗浄液となる液体に通すことで、ガス内に含まれる、ばいじんや有害物質を液体に混合させて、ろ過する方式です。ウェットスクラバーは、処理するガスに水分が多い場合などに用いられます。
◇ウェットスクラバーの特徴
吸湿性粉塵、 高温排ガスダスト、 発火・爆発性粉塵(グラインダー、研磨)の集塵と有毒ガスの吸収、中和(酸、アルカリ)、 悪臭ガスの吸収が可能です。
◇ウェットスクラバーの仕組み
装置内に塵などを含んだガスを注入し、スロートと呼ばれる細い通路を高速で通ります。ガスの影響で装置内の水が自動的に巻きあがり、壁面と衝突しながら渦流を発生させることで、ガス内にある塵を装置内の水が吸収していきます。
その後、清浄化されたガスは機器の上部から排出され、吸着した粉塵などは、排水と同時に回収可能です。
ウェットスクラバーの利点と課題~寒冷地では凍結対策が必要
◇ウェットスクラバーの利点
ウェットスクラバーの利点は、捕集・分離の対象は、粉塵だけでなく、有害ガスや薬剤などにも対応可能な点です。特に、湿式集塵機の特徴を活かし、乾式集塵機では機器の寿命や性能を悪化させる水分量が多い塵を除去する場合や、高温ガスなどにも対応できる点で優れています。
また、排ガスの温度を下げる役割も果たすことが可能です。
◇ウェットスクラバーの課題
一方で、ウェットスクラバー使用において、注意すべきデメリットも存在しています。
ウェットスクラバーは、粉塵や有害ガスを水が捕集するため、それらが混ざりあった排水の後処理として別の設備が必ず必要です。
また、排ガス内に含まれる物質と水の化学反応により、装置や周辺への影響なども十分に考慮しなければいけません。
メンテナンスの面では、寒冷地などで使う場合には捕集用の水が凍結する恐れがあるため、対策を講じる必要があります。
ウェットスクラバーのメンテナンスの重要性と凍結対策
◇ウェットスクラバーのメンテナンス
ウェットスクラバーは日々のメンテナンスが重要です。メンテナンスが行なわれなかった場合の影響をご紹介します。
ウェットスクラバーで捕集する対象にもよりますが、有害ガスを中和液で除去する場合、メンテナンスを怠ると、装置内部に汚れが付着し、結果、有害ガスの除去率の低下につながってしまいます。
また、装置壁面や水の汚れがひどくなると、除去率の低下や異臭の発生にもつながるため、日々のメンテナンスが重要です。
◇ウェットスクラバーの凍結対策
寒冷地における使用時には、装置内の水が凍結しないよう対策が必要です。本体をカバーで覆うことで保温効果を高め、本体や配管部分に電熱線を巻きつけてスクラバーを温めます。本体だけでなく、内部の水も温められるように、投げ込み式のヒーターなどを導入し、徹底的な対策を行う必要があります。
また、寒冷地の屋外で設置する場合、雪の対策も欠かせません。積雪でつぶれないように耐荷重性を持たせる、耐寒性と耐腐食性を持つFRP製にするなどの工夫が必要です。
凍結対策が施されたウェットスクラバー導入事例
上述した通り、寒冷地でウェットスクラバーを導入する際は、凍結対策が必須です。以下で、実際に凍結対策が施されたウェットスクラバーを導入した事例をご紹介します。
◇製薬会社の事例
製薬会社の導入時の悩みは、寒冷地の屋外における内部の水の凍結と水が混ぜられることで発生する泡の飛散という2点がありました。
これに対し、寒冷地でも内部の水が凍結しない対策と泡の飛散を防止する対策を講じました。凍結対策として、配管や本体に電熱線を巻きつけ、本体を加温し、さらに内部の水もヒーターで加温することで、寒冷地での凍結対策を実施しました。泡の飛散に対し、アコーでは消泡剤の投入口を設置することで、対策しています。
結果として、装置内部の水の凍結は一切なく、泡の飛散も防ぐことができました。
◇高温のガスにも耐えられる酸性ガスの洗浄用スクラバー
ウェットスクラバーは、使う素材、除去したい物質の種類によってさまざまな構成が実現可能です。酸性ガスかつ高温のガスがある程度流入しても耐えられるスクラバーを実現することができます。
工場によっては、薬品を取り扱うため、耐薬品性の高い塩ビ製を採用、その中でも耐熱性を確保した耐熱塩ビ製でウェットスクラバーを製作しています。凍結対策として、内部の水の加温用ヒーターを導入しています。
ウェットスクラバーは大型の集塵機で、排ガスを洗浄液に通して有害物質を液体に混合し、ろ過します。特徴は吸湿性粉塵や有毒ガスの吸収で、装置内の水が吸収し排出されます。利点は多様な物質に対応可能で、排ガス温度を下げることもできます。
一方、メンテナンスが重要で、寒冷地では凍結対策が必要です。事例では、製薬会社が内部水の凍結や泡の飛散を防ぐために対策を講じ、高温・酸性ガスに耐えるスクラバーも開発されています。
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