大型集塵機で排ガスの工程内リサイクルに成功した事例を紹介
公開:2024.05.30 更新:2024.12.23
石膏は建設材料として広く使われていますが、その廃棄方法には課題が多く存在します。特に、石膏ボードは埋め立て時に有害ガスを発生させる可能性があり、環境への悪影響が懸念されます。
また、リサイクルも困難であり、この点を考慮した処理と再利用が求められています。石膏ボードの適切な処理を通じて、環境負荷の軽減と資源の有効活用が急務とされています。
石膏の廃棄量を減らすために、排ガスから粉砕石膏を回収しリサイクルすることを検討していた建築建材メーカーの事例では、アコーの「エアショックバグフィルター」を導入し、高耐熱性を持つろ布を使って微細な粒子を効果的に集塵しました。
目次
石膏は有用性があるが、処分に問題がある
石膏はその多用途性で広く利用されていますが、使用後の処分プロセスにはいくつかの課題が存在します。特に建築業界における石膏ボードの廃棄は、環境への影響と処理コストの問題を引き起こしています。ここでは、石膏の有用性と処分時の問題点について掘り下げていきます。
◇石膏ボードは廃棄処分が大変
石膏ボードは建築物の内装に広く使用される有用な資材であり、その安価さや施工のしやすさ、耐火性や遮音性などの利点があります。しかし、その廃棄処分には注意が必要です。
石膏ボードを埋め立てると、主原料の硫酸カルシウム(CaSO4)と有機分が土中で微生物によって分解され、有害な硫化水素(H2S)を発生する可能性があります。硫化水素は人体に有害であり、その発生は周辺環境や健康に深刻な影響を与えることもあるのです。
また、石膏ボードに含まれるフッ素が流出し、土壌や地下水を汚染する可能性もあります。これらの要因から、石膏ボードの適切な処分は重要です。
法律では、廃石膏ボードは産業廃棄物として管理型最終処分場に処分するよう定められています。管理型最終処分場における処分コストは他の処分場よりも高額であり、建設現場などにとっては大きな負担となります。
このため、石膏ボードの廃棄処分には適切な計画と手順が必要であり、環境への影響を最小限に抑えるための取り組みが重要です。
◇リサイクルもしにくい
現在、石膏ボードのリサイクル推進が求められていますが、その現状は再資源化率が60〜70%程度であることが挙げられます。具体的には、新築工事時に余った石膏ボードなど、再生しやすい「新築系」の廃石膏ボードに焦点を絞っても、再資源化率はこの程度にとどまっています。
この低い再資源化率には複数の要因が関与しています。まず、石膏ボードの再資源化には素材の分別作業が必要です。この作業には一定の手間やコストがかかります。
また、現行のリサイクルプロセスにおいては、石膏ボードの再資源化先となる再生石膏の用途が限られていることも挙げられます。再生石膏を受け入れる需要が不足しているため、再資源化率が十分に高まらない状況が続いています。
このような背景から、石膏ボードのリサイクル推進には、素材の分別作業の効率化や再生石膏の用途拡大など、さまざまな取り組みが必要です。コスト削減や環境負荷の低減という両面から、石膏ボードのリサイクル率向上が急務となっています。
工程内リサイクルを大型集塵機で叶えたい
工程内リサイクルは、製造過程で発生する廃材や副産物を再利用することで、資源の有効活用とコスト削減を目指す方法です。しかし、実施には多くの課題が伴います。
◇石膏の粒子は人力での回収は難しい
石膏の最終製品の粒子径が100μm未満であるということは、非常に微細な粒子が含まれていることを示しています。このような微細な粒子は、人間の目ではほとんど見えないほど小さく、手作業での回収は非常に困難です。
100μm未満の微細な粒子は空気中に浮遊しやすく、重力による沈降や手作業での回収が非常に困難です。また、このような微細な粒子は空気中で漂いやすく、風や気流によって運ばれることもあります。そのため、効果的な回収方法を見つけるには、高度な技術や装置が必要です。
◇集塵機を導入するにも問題がある
集塵機を置きたいエリアには天井までの高さ制限があり、さらにその上部には屋根を支える斜材が配置されています。これらの制約により、集塵機を設置するスペースが制限され、設置が難しくなります。
特に、排ガスを吸引するために必要な装置の大きさが予想される場合、この制約はより顕著になります。結果として、集塵機を効果的に配置することが難しくなります。
工程内リサイクルを実現した事例
ある建築建材メーカーでも、石膏の破棄量を減らすべく、排ガスに含まれる粉砕石膏の回収およびリサイクルを検討していました。このメーカーでは、アコーの大型集塵機「エアショックバグフィルター」を導入します。
◇エアショックバグフィルターとは
エアショックバグフィルターは、ろ布で微細な粒子を集塵するフィルターシステムです。
粉体の収集、乾燥機排気処理、粉砕品の回収、空気輸送、焼却炉排気処理、局所集塵、環境集塵、白煙・黒煙の除去、さらには外気の取り入れまで、多岐にわたる産業や場所で利用されています。
さまざまなろ布素材が用意されており、特に高耐熱性を持つPTFEやPTFEラミネート品が注目されています。また、すべての製品はオーダーメイドで提供され、お客様のニーズや設置環境、処理ガスの特性に合わせてカスタマイズされます。
◇設置場所の問題にも対応
エアショックバグフィルターの導入にあたって、もう一つ問題がありました。建屋の天井高さや構造に制約があったのです。そこでアコーは、建屋の斜材を避けた設計を行います。
まず、装置の設計段階では、斜材が貫通するようなスペースを設けることで、建屋の構造に配慮しました。現場での寸法検査を入念に行い、斜材の位置や寸法を正確に把握し、それに基づいて装置の真ん中にスペースを設けました。
さらに、装置の高さを最小限に抑えるために、排出口をWスクリューにするなどの工夫も行っています。
また、作業者の負担を軽減するために、フィルター交換時に石膏粉が触れないような仕様を提案しました。具体的には、フィルターを上から取り出せるような仕組みを採用しました。
バグフィルターでリサイクル材を回収
エアショックバグフィルターの導入で、当初の目的であった粉砕石膏の回収が可能となりました。この事例では、工程内リサイクルによってさらに良い効果が生まれています。
◇廃棄と材料のコスト削減に成功
バグフィルターの導入により、排ガス中に含まれる粉砕石膏を効果的に回収することができました。
粉砕石膏は排ガスと一緒に放出され、廃棄されるか、環境に放出されることになりますが、バグフィルターを使用することで、排ガスから石膏粉を除去し、それをリサイクル材料として再利用できるようになりました。
この結果、廃棄されるはずだった石膏粉を回収することで、廃棄コストが削減。さらに、回収した石膏粉を再利用することで、新たな材料を購入する必要がなくなり、材料コストも抑えられました。
◇人体への被害リスクも低下
作業者が石膏でじん肺症を発症する主な原因は、シリカ汚染によるものです。塵や粉塵に含まれるシリカが、作業者の肺に入ることでじん肺症を引き起こします。
バグフィルターの導入により、作業者がシリカに曝される可能性が低下し、結果としてじん肺症のリスクも減少します。
石膏は建設材料として広く使用されていますが、その廃棄方法には多くの課題があります。特に石膏ボードは、埋め立てる際に有害ガスを発生させる可能性があり、環境への悪影響が懸念されています。具体的には、石膏ボードの主成分である硫酸カルシウムが分解されることで、硫化水素という有害ガスが発生するリスクがあるのです。このガスは人体に有害であり、適切な処理が必要です。
こうした課題に対処するためには、石膏ボードの廃棄とリサイクルの新しい方法が必要です。例えば、ある建築建材メーカーでは、石膏の廃棄量を減らすために、排ガスから粉砕石膏を回収しリサイクルすることを検討しました。
このメーカーは、アコーの「エアショックバグフィルター」という大型集塵機を導入しました。このフィルターは高耐熱性を持つろ布を使用しており、微細な粒子を効果的に集塵することができます。
エアショックバグフィルターの導入により、メーカーは排ガスに含まれる粉砕石膏を効果的に回収し、リサイクル材料として再利用することが可能となりました。
これにより、廃棄コストの削減と資源の有効活用が実現し、環境への負荷も軽減されました。このような取り組みは、石膏ボードの適切な処理と再利用の重要性を示しており、持続可能な建設業界の実現に向けた一歩となっています。