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大型集塵機に関わる安衛法とは?設置の届出と必要な書類

公開:2024.10.29 更新:2024.10.29

安衛法

労働安全衛生法(安衛法)は、日本の労働者の安全と健康を保護するために制定された法律で、職場での労働災害や健康障害を防ぐことを目的としています。安衛法に基づく規制には、職場での機械設置や移転時に届け出が必要な場合があり、大型集塵機の設置や変更もその対象です。

特定の有害物質や粉塵を扱う現場では、労働基準監督署への届け出が義務付けられており、違反時には罰則が科されます。また、化学物質の取り扱いにおいても集塵機の重要性が高まり、湿式集塵機やろ過式集塵機(バグフィルター)が有効な対策として利用されています。

安衛法の概要と目的

安衛法(労働安全衛生法)は、日本における労働者の安全と健康を保護するための重要な法律です。この法律は、職場での事故や健康障害を未然に防ぐために制定され、さまざまな規則が設けられています。

◇安衛法とは

安衛法とは「労働安全衛生法」の略称で、日本国内の職場で労働者の安全と健康を確保するために定められた法律です。1972年の制定以来、職場での危険を未然に防ぎ、快適な労働環境を整えることを目指しています。

この法律は、職場における災害を防止し、労働者が安心して働ける環境を整備するための基準を規定しており、企業や事業主にはこれに従う義務が課されています。

◇制定された背景と目的

安衛法が制定された背景には、1960年代から1970年代にかけての高度経済成長期における労働災害の多発が挙げられます。この時期、日本の産業は急速に成長しましたが、その影響で過酷な労働環境が広がり、労働災害が社会問題となっていました。

こうした労働災害や健康被害を減少させるため、政府は労働者の安全と健康を守るための法整備に着手し、安衛法が制定されました。安衛法の主な目的は、労働者が安全で健康な環境で働けるよう、事業者に安全配慮義務を課すことにあります。また、職場での労働災害を防ぐための基準を示し、労働者の保護を強化することも目的としています。

◇労働安全衛生規則との違い

安衛法は大枠としての基本方針や目的を規定する法律であり、一方で労働安全衛生規則は、安衛法に基づいて具体的な詳細や運用方法を示しています。例えば、安衛法が「安全な作業環境を整えること」を規定している場合、労働安全衛生規則はその実現のための具体的な方法や手順について定めています。

したがって、安衛法は包括的な法律であり、労働安全衛生規則はその法律に基づく実務的な基準として位置付けられています。

安衛法に基づき大型集塵機の設置や移転には届け出が必要

安衛法では、労働者の安全と健康を守るために、特定の機器の設置や移転に際して事前の届け出が必要です。大型集塵機もその対象のひとつで、一定の条件下で届け出を行う義務があります。ここでは、届け出が必要なケースや、届け出を怠った場合のペナルティについて説明します。

◇設置・移転で届け出が必要なケース

作業現場で使用する集塵機が、金属や鉱物の粉塵など労働災害のリスクが高い粉塵を吸引する場合、労働基準監督署への届け出が必要です。この届け出の目的は、危険性の高い粉塵が労働者に及ぼす健康被害を防止し、事業所における安全措置が適切に講じられているかを確認することです。

届け出が必要となる対象粉塵の例は、以下のとおりです。

・鉱物粉塵(石炭、石灰石、石膏など)
・金属粉塵(鉄、アルミニウム、銅、ステンレスなど)
・有機溶剤粉塵(トルエン、キシレン、ベンゼンなどを含むもの)
・特定化学物質粉塵(アスベスト、鉛、水銀などの有害物質)
・高温物質粉塵(溶接、鋳造、焼成などの工程で発生する粉塵)
・腐食性物質粉塵(酸化アルミニウム、塩化ナトリウムなど)

一方、吸引対象が木材、綿、紙、飼料などの植物性の粉塵であれば、比較的安全性が高いと見なされるため、届け出は不要です。

◇届け出を怠った場合のペナルティ

安衛法では、設置や移転の届け出を怠った場合に科される罰則は以下のとおりです。

・1年以下の懲役または50万円以下の罰金
人体に有害な物質が発生する作業環境で、局所排気装置の設置を怠った場合などが該当します。

・50万円以下の罰金
局所排気装置の設置・変更・移転の際に届け出を行わなかった場合、一年に一度の専門家による定期自主検査を実施しなかった場合、または定期自主検査の記録を3年間保存しなかった場合などが該当します。

届け出に必要な書類と手続きの流れ

安衛法
出典:photoAC

安衛法に基づき、大型集塵機や局所排気装置の設置や移転を行う際には、適切な届け出が必要です。以下に、届け出に必要な書類と手続きの流れについて説明します。

◇届け出に必要な書類

届け出に必要な書類は以下のとおりです。種類が多いため、早めの準備が推奨されます。

・局所排気装置摘要書:局所排気装置の概要や性能を記載する書類。
・局所排気装置計算書:排気装置の設計や性能に関する計算結果を示す書類。
・排気系統図:排気装置の接続関係や配置を示した図面。
・排気ファンの予想性能曲線図:排気ファンの性能特性を示した図。
・局所排気装置の外観図:設置予定の局所排気装置の外観を示す図面。
・機械等設置・移転・変更届:設置・移転・変更に関する申請書。
・周囲との状況を示す建物配置図:設置場所周辺の建物との関係を示した図。
・建設物および主要な機械等の配置図:作業場での主な設備と局所排気装置の設置予定場所を示した図面。

◇届け出の流れ

届け出を行う際の流れは次のとおりです。まず、局所排気装置の設置を決定した時点で、必要な書類を準備します。書類の作成は専門業者に依頼することも可能です。その後、作成した書類を管轄の労働基準監督署に提出します。

届け出の提出には期限があり、原則として設置の30日前までに提出が必要です。提出後、監督署が書類を確認し、必要に応じて現地調査が行われます。問題がなければ、届け出が受理され、正式に装置を設置することが可能となります。

化学物質回収に対応可能な集塵機

化学物質に関する規制が厳格化するなか、安衛法の改正によって対象となる化学物質が大幅に追加され、2026年4月にはその総数が約2,900物質に達する見込みです。このため、化学物質を扱う業界では、集塵機の導入など、ばく露を最小限に抑える対策が急務となっています。

以下では、化学物質の回収に有効な集塵機の種類とその特徴について説明します。

◇ろ過式集塵機(バグフィルター)

ろ過式集塵機(バグフィルター)は、微細な粉体や煙を効率的に回収するための装置です。バグフィルターの構造は基本的に掃除機と同じで、フィルターを通過させることで空気中の粒子を捕集します。

また、バグフィルターは多層フィルター構造を採用しており、さまざまなサイズの微粒子を効果的に捕捉できます。木材加工や金属加工、さらには化学薬品の製造プロセスなど、粉塵が多く発生する業務での利用が一般的です。

フィルター素材にはポリエステル、アクリル、ガラス繊維、ウール、コットンなどがあり、それぞれの特性に応じて使用環境や処理する粉塵の種類によって選択されます。

◇湿式集塵機(スクラバー)

湿式集塵機(スクラバー)は、高熱のガスや粉塵の回収に特化した集塵機です。集塵過程で水や洗浄液を使用し、空気中の有害物質を効率的に除去します。ガスを水流に通すことで、微細な粉塵や化学物質を捕集し、クリーンな空気を排出します。

スクラバーの大きな特徴は、ガスを冷却しながら化学物質を捕集できる点です。特に高温のガスを扱う場合において、湿式集塵機はその性能を最大限に発揮します。

スクラバーの導入により、化学工場や製造業で発生する高温ガスや化学反応による粉塵を効率的に処理し、作業環境の安全性を向上させることができます。


労働安全衛生法(安衛法)は、日本における労働者の安全と健康を守るために1972年に制定された法律で、職場での労働災害や健康被害を防ぐことを目的としています。安衛法は、企業や事業主に安全配慮義務を課し、快適な労働環境の整備を義務付けています。

特定の機器や設備の設置や移転には、労働基準監督署への届け出が必要で、大型集塵機もその対象です。特に、金属や鉱物粉塵、有害化学物質を取り扱う現場では届け出が義務化されており、違反があれば罰則が科されることもあります。

安衛法の規制は基本的な方針を示し、具体的な運用や手順は労働安全衛生規則に基づいて行われます。集塵機の設置に際しては、30日前までに必要書類を準備して届け出を行わなければならず、届け出を怠ると罰金や懲役が科される可能性があります。

また、集塵機は、作業現場で発生する有害な粉塵や化学物質を効果的に回収する重要な装置です。バグフィルターを用いたろ過式集塵機は、微細な粉塵を効率よく回収し、湿式集塵機(スクラバー)は高温ガスや化学物質の捕集に優れています。

近年では、化学物質に関する規制が強化され、2026年には対象物質が約2,900に拡大される見込みです。そのため、労働者の健康を守るために、これらの装置の導入や対策が急務となっています。

東京都内の一部地域では、これらの対策を講じることで、集塵機を活用した作業環境の安全向上に努めており、これにより職場の安全性が一層高められています。

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