金属加工で生じるスラグはどう回収する?放置するリスクも解説
公開:2024.10.28 更新:2024.12.23
スラグとは、溶接や製鉄の高温作業中に金属表面に生成される酸化物や不純物のことで、特に溶接や鋳造の過程で金属が酸素と反応する際に生じます。スラグには酸素や窒素が金属内部に侵入するのを防ぐ役割もありますが、放置すると溶接強度の低下や亀裂の原因になる可能性があります。
また、溶接時には有害物質である六価クロムが発生し、吸引すると健康被害を引き起こすリスクがあります。そのため、作業環境の安全性を保つためには、適切な保護具の使用やスラグの回収が必須です。
目次
スラグはなぜできる?メカニズムとは
スラグは、主に溶接や鋳造の過程で金属が酸化した際に生成されるものであり、品質の向上や仕上げに影響を与えるため、スラグの発生や除去は非常に重要です。この章では、スラグの基本的なメカニズムについて詳しく解説し、スラグが発生する理由とその仕組みを明らかにします。
◇スラグとは
スラグとは、溶接や製鉄などの高温作業中に、金属の表面に形成される酸化物や不純物のことです。具体的には、溶融金属と空気中の酸素が反応することで発生する酸化スケールや、金属自体に含まれる不純物が溶け出して固まったものを指します。
特に溶接の際に発生するスラグは、溶接棒の被覆材が溶けて冷却されることで生じ、溶接後に金属表面を覆います。スラグは溶接品質を左右する重要な要素であり、仕上がりを美しくするためには、その除去が欠かせません。
また、スパッタと混同されがちですが、スラグは溶接時に溶融金属が冷却されて固まるものです。一方、スパッタは溶接中に飛散する溶融金属の小さな粒で、そのなかにスラグも含まれます。どちらも溶接の過程で発生しますが、役割や影響は異なります。
◇スラグができるメカニズム
スラグが発生する理由は、主に金属が酸素と反応することに起因します。溶接や鋳造時に金属が高温になると、その表面は空気中の酸素や窒素と反応しやすくなります。
これにより金属表面に酸化膜が形成され、それが冷却後にスラグとなります。特に溶接作業中には、溶接棒の被覆材が溶け、溶融金属とともに反応し、不純物が浮き上がってスラグとして残ります。
スラグは、溶接の保護にも役立つ一面があり、冷却過程で酸素や窒素が金属内部に侵入するのを防ぎます。しかし、スラグが除去されないまま残ると、溶接不良や強度不足の原因となり得ます。こうしたスラグの発生メカニズムを理解することが、良質な溶接を行うためには不可欠です。
スラグが与える悪影響
スラグは、適切に管理されないと溶接品質に悪影響を及ぼすことがあります。特に、溶接部分にスラグが巻き込まれた場合や、作業環境でスラグから発生する有害物質が人体に悪影響を及ぼす可能性が懸念されます。ここでは、スラグの発生がどのように悪影響を与えるかについて詳しく解説します。
◇巻き込みの発生
スラグ巻き込みとは、溶接部分にスラグが取り込まれてしまう現象を指します。これは、溶接が不適切に行われた場合に発生し、結果として溶接強度の低下や亀裂の原因となります。
溶接後にスラグが十分に除去されず、そのまま残った場合、溶接部分の耐久性が著しく低下し、機械的な負荷に耐えられなくなることがあります。スラグ巻き込みは、溶接技術の未熟さや、不適切な溶接条件によって引き起こされることが多いため、事前の準備と後処理が重要です。
◇六価クロムの吸引
スラグから発生する有害物質の中で特に問題となるのが六価クロムです。六価クロムは、溶接時に発生する有毒な化学物質で、吸引すると人体に深刻な健康被害を引き起こす可能性があります。長期間にわたって六価クロムを吸引することで、肺がんや皮膚炎を発症するリスクが高まります。
さらに、作業現場で発生する粉塵や煙が周囲に拡散し、作業者のみならず周囲の環境にも悪影響を与えることが指摘されています。そのため、六価クロムの発生を防ぐための対策や、適切な保護具の使用が求められています。
スラグ回収に適した集塵機
スラグが発生する現場では、スラグや粉塵を効率的に回収するために集塵機が必要です。集塵機を使用することで、作業環境をクリーンに保ち、健康リスクを低減することが可能です。この章では、スラグ回収に適した集塵機について、特に電気集塵機とバグフィルターに焦点を当てて解説します。
◇電気集塵機
電気集塵機は、静電気を利用して空気中の微粒子を集める装置です。この仕組みは、空気中の粉塵やスラグの微粒子に電気を帯びさせ、それを電極に引き寄せることで捕集するというものです。電気集塵機の大きなメリットは、微細な粒子まで効率よく回収できる点にあります。
溶接や製鉄などの現場では、大量の粉塵やスラグが発生するため、電気集塵機を使用することで作業環境の安全性を向上させることが可能です。また、電気集塵機はエネルギー効率が高く、長期間使用してもコストを抑えられます。定期的なメンテナンスを行うことで、機器の寿命を延ばし、効率的な集塵が可能です。
◇バグフィルター
バグフィルターは、空気中の粉塵やスラグを繊維状のフィルターで捕集する装置です。空気を通過させる際にフィルターが粒子を捉える仕組みで、電気集塵機とは異なり、メカニカルな方法で集塵を行います。
バグフィルターの利点は、非常に微細な粉塵まで効率よく取り除ける点と、フィルターを定期的に交換することで長期間安定した性能を維持できる点です。スラグの回収においてバグフィルターは優れた性能を発揮します。
溶接現場や製鉄所で発生するスラグや粉塵は、非常に微小な粒子であることが多く、バグフィルターを使用することでこれらを確実に捕集し、作業環境の清浄化に貢献します。
広範囲に対応可能な大型集塵機
スラグの発生が多い現場や、大規模な作業場では、広範囲にわたる粉塵やスラグの除去が求められます。特に、大型の集塵機を導入することで、効率的に広いエリアをカバーできるため、作業環境を清潔に保つことが可能です。
この章では、広範囲に対応可能な大型集塵機について、エアショックバグフィルターとパルスジェット集塵機をご紹介します。
◇エアショックバグフィルター
エアショックバグフィルターは、定期的にエアショックを与えることでフィルターに付着した粉塵を自動的に除去する仕組みを持っています。このシステムにより、フィルターが目詰まりしにくく、長期間にわたって高い集塵効率を維持できます。大規模な溶接現場や製鉄所など、スラグの発生量が多い場所では、このタイプの集塵機が効果的です。
エアショックバグフィルターは、フィルター交換の頻度が少なく済むため、メンテナンスコストの削減にもつながります。また、フィルターの自動クリーニング機能により、作業中の稼働を止めずに集塵作業を続けられる点も大きなメリットです。
◇パルスジェット集塵機 WRT
パルスジェット集塵機 WRTは、エアジェットを使ってフィルターに付着した粉塵やスラグを効果的に除去するシステムを採用しています。フィルターに逆流させる空気の圧力を利用して、フィルター表面をクリーニングすることで、常に高い集塵効率を保ちます。特に、広範囲にわたる大規模な集塵作業において、その性能を発揮します。
この集塵機は、複雑な作業環境や粉塵が多く発生する場所でも効果的に機能し、効率的な集塵を実現します。パルスジェットのメカニズムにより、フィルターの目詰まりを防ぎながらも、高い集塵率を維持できるため、作業環境の改善に大きく貢献します。
スラグとは、溶接や製鉄などの高温作業中に金属表面に生成される酸化物や不純物のことです。特に溶接や鋳造の過程で金属が酸素と反応することで発生し、溶接品質に大きく影響を与えます。
スラグは酸素や窒素が金属内部に侵入するのを防ぐ役割がありますが、放置すると溶接強度の低下や亀裂の原因となるため、適切な管理が必要です。また、溶接時には有害な六価クロムが発生し、吸引すると健康被害を引き起こすリスクがあるため、保護具の使用や適切なスラグの除去が求められます。
スラグは、金属が高温で酸素や窒素と反応し酸化膜を形成することで生じます。溶接作業中には、溶接棒の被覆材が溶けて冷却され、溶融金属と反応して不純物が浮き上がりスラグとして残ります。このスラグが適切に除去されなければ、溶接部分に巻き込まれ溶接強度の低下や耐久性に悪影響を及ぼすことがあります。
スラグや粉塵の回収には集塵機が不可欠です。電気集塵機は静電気を利用して微粒子を捕集し、微細な粒子まで効率よく回収するため、溶接や製鉄の現場で広く使われています。エネルギー効率も高く、定期的なメンテナンスで長期間使用可能です。バグフィルターはメカニカルな方式で空気中の粉塵を繊維状フィルターで捕集し、特に微小な粒子に対して優れた性能を発揮します。
広範囲に対応できる大型集塵機もあり、特にスラグの発生量が多い現場では、エアショックバグフィルターやパルスジェット集塵機が効果的です。エアショックバグフィルターはフィルターの目詰まりを防ぎ、長期間にわたり高い集塵効率を維持します。パルスジェット集塵機は、エアジェットを利用してフィルターに付着した粉塵を効率的に除去し、複雑な作業環境でも高い集塵効率を保ちます。