廃石膏ボードのリサイクルが急務!大型集塵機を使ったリサイクルの流れ
2024/10/28
石膏ボードは、石膏を原材料とした建築資材で、内装材として幅広く使用されています。種類には、一般的な石膏ボード、防水処理を施したシージングボード、デザインが施された化粧ボード、吸音機能を持つ吸音ボードなどがあります。
石膏ボードは防火性や遮音性に優れ、安価で使いやすい一方、廃棄時に硫化水素を発生させるリスクがあるため、産業廃棄物として適切に処理しなくてはなりません。日本では石膏ボードの大量生産が続き、排出量も増加しているため、リサイクル技術の確立が急務とされています。
目次
石膏ボードとは?
廃石膏ボードのリサイクルが急務といわれていますが、そもそも石膏ボードとはどのようなものか知らない方も多いのではないでしょうか。まずは、石膏ボードの定義や種類、メリット、捨て方などの基本事項を確認してみましょう。
◇そもそも石膏ボードとは
石膏ボードとは、板状の石膏の周囲をボード用原紙で包んだ建築資材のことです。石膏ボードの始まりは古く、1895 年にアメリカのオーガスティン・サケットによって発明されました。防火性・遮音性に優れ、扱いやすく、また安価なことから、現在では内装材として最も多く利用されています。
石膏ボードは、以下の4つに大別できます。
・石膏ボード
最も一般的な石膏ボードであり、平ボードや普通ボードなどとも呼ばれます。中〜高層のビルや住宅全般において、天井や壁、内装材として広く利用されています。
・シージング石膏ボード
芯となる石膏、周囲を包むボード用原紙の双方に、防水処理をした石膏ボードです。一般的な石膏ボードが使えない、キッチン・脱衣所などの水回りに広く利用されています。
・化粧石膏ボード
表面にデザインが施された石膏ボードであり、塗装や型押しの他、デザインされたボード用原紙を貼る、ボード用原紙の上にデザインされた紙やシールを貼る、といった方法で作られます。そのデザインの豊富さから、中〜高層のビルや住宅全般において、アクセントやDIYに活用されています。
・吸音石膏ボード
音を吸収させるため、裏面まで貫通する小さな穴を均等に開けた石膏ボードです。学校や公会堂など、防音が求められる施設において、天井や壁、内装材として広く利用されています。
◇石膏ボードは産業廃棄物
そのメリットから広く活用されている石膏ボードですが、そのまま埋め立てると有害な硫化水素を発生させたり、土壌や地下水を汚染したりするリスクがあります。そのため、不要になったときは、一般ゴミではなく産業廃棄物として、管理型最終処分場に持っていかねばなりません。
かつて廃石膏ボードは、解体工事で生じたものはがれき類、製造工程で生じたものはガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くずというように、排出方法で分けて分類されていました。
しかし、現在では排出方法に関係なく、すべての廃石膏ボードが、ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くずに分類されています。
石膏ボードの排出量とリサイクル率
石膏ボードには硫化水素を発生させるリスクがあるため、不要になったときは産業廃棄物として適切に処理しなければなりません。では、実際にどれくらいの石膏ボードが排出されており、そのうち何割がリサイクルされているのでしょうか。
石膏ボードの排出量とリサイクル率を、今後の推移予測も含めて見てみましょう。
◇石膏ボードの生産と排出量の推移
日本における石膏ボードの生産は、1921年から始まり、高度経済成長やバブルを機に本格化しました。実際に、1960年以前は100万㎡未満だった生産量は、1995年に約600万㎡でピークを迎えています。その後は緩やかに減少したものの、2010年ごろには下げ止まり、昨今は500万㎡前後を推移するようになりました。
こうした石膏ボードの大量生産に伴い、石膏ボードの排出量もほぼ一定のペースで増加を続けており、2040年ごろには約300万トンに及ぶと推測されています。
大量の廃石膏ボードを処理するためには、管理型最終処分場を増やす、あるいはリサイクル技術を確立していかなければなりません。最終処分場の不足が叫ばれる現在、リサイクル技術の確立が急務だといわれています。
◇リサイクル率は伸び悩み
将来の大量排出を前にリサイクルが求められる反面、廃石膏ボードのリサイクル率は現在伸び悩んでいます。汚れが少なく再利用しやすいはずの、新築工事で余った廃石膏ボードでさえ、60%程度しかリサイクルされていません。この背景としては、分別に手間がかかる、リサイクルした石膏の利用先が乏しい、などといった理由が考えられます。
集塵機を使った硫化水素を発生させないリサイクル方法
石膏ボードのリサイクル技術確立が急務といわれる中、注目されつつあるのが、集塵機を使ったリサイクル方法です。集塵機を使ったリサイクル方法は、もちろん硫化水素を発生させるリスクもありません。詳しい手順・内容を確認してみましょう。
◇異物を除去
まずは、粉砕した廃石膏ボードから磁選機で鉄を取り除き、篩で10mm以下・以上を分けます。10mm以下のものはそのまま後の工程に回され、10mm以上のものはさらに手作業で異物を取り除きます。
◇集塵機で紙を回収
続いて、分別装置で石膏と紙を分け、集塵機で粉状の紙を吸い上げます。この粉状の紙は、叩くと綺麗な紙になり、圧縮梱包して出荷されたのち、卵の容器、緩衝剤などのパルプモールドとして利用できます。また、集塵機に集まったワタも、RPFの原料として再利用が可能です。
◇石膏を粉砕
最後に、残った石膏を粉砕機でさらに細かい粉末にすると、再利用できる石膏が出来上がります。この石膏は、そのまま石膏ボードやセメントとして再利用できますが、熱風で乾燥させると、さらにセメント製品の添加剤としても使えるようになります。
大型集塵機の導入で生産性向上と従業員の健康を両立
大型集塵機の導入には、石膏ボードのリサイクル以外にも、生産性向上や従業員の健康維持など、多くのメリットがあります。具体的な内容とその理由を確認してみましょう。
◇故障率の低下と生産性向上
機械や設備の中に入り込んだ石膏粉塵は、摩耗や故障の原因になり、火災や焼損をも引き起こしかねません。大型集塵機で石膏粉塵を回収すれば、こうした故障や事故のリスクを低減し、生産性の安定や向上が図れます。
◇労働環境の改善
石膏ボードには、硫化水素を発生させるリスクの他、アスベストが含まれているリスクもあります。アスベストとは、繊維状のけい酸塩鉱物で、耐火性や耐熱性、遮音性などに優れており、建築工事を中心に防音材や断熱材など、多くの製品に利用されてきました。昭和30年代から60年代の間には、アスベスト入りの石膏ボードも作られています。
アスベスト入りの石膏ボードを砕くと、周囲にアスベストが飛び散り、皮膚炎や呼吸器疾患につながるリスクがあります。このような危険が伴う労働環境では、労働者の心身に負担がかかり、作業の質や量にも影響がでかねません。
大型集塵機を導入すれば、飛び散る前に石膏粉塵を集められるようになり、皮膚や肺のリスクを大幅に低減することにも役立ちます。また、視界がクリアになることで、引火や爆発、事故のリスクも低減できるでしょう。労働者の心身の負担が減り、作業の質や量の向上、それによる生産性の向上が期待できます。
石膏ボードは、石膏を主成分とし、その周囲をボード用の原紙で包んだ建築資材です。1895年にアメリカで発明され、防火性や遮音性に優れていることから、内装材として世界中で広く使用されています。
廃棄された石膏ボードがそのまま埋め立て処分されると、微生物の働きにより硫化水素が発生し、土壌や地下水の汚染を引き起こすリスクがあります。そのため、廃石膏ボードは一般ゴミではなく、産業廃棄物として適切に処理しなければなりません。
日本での石膏ボードの生産量は、1995年に約600万㎡でピークを迎え、その後はやや減少傾向にありますが、現在も年間約500万㎡が生産されています。石膏ボードの排出量も今後増加し続け、2040年には約300万トンに達すると予測されています。
しかし、リサイクル率は低く、特に新築工事で発生する廃石膏ボードのリサイクル率は約60%に留まっています。その背景には、分別の手間やリサイクル後の利用先が限られていることが挙げられます。このような状況を改善するため、リサイクル技術の確立が急務です。
注目されているリサイクル方法の一つに、大型集塵機を用いた技術があります。このリサイクル方法は、硫化水素の発生リスクを抑えつつ、資源を有効活用する点で注目されています。
大集塵機の導入は、石膏ボードのリサイクル以外にも多くのメリットをもたらします。石膏粉塵が機械内部に入り込むと、機械の摩耗や故障、さらには火災のリスクが高まりますが、集塵機を導入することで、これらのリスクを大幅に低減し、生産性の向上を図れます。
また、集塵機を使用すれば有害物質の飛散を防ぎ、従業員の健康を守るだけでなく、労働環境全体を改善することが可能です。事故や引火のリスクも低減し、作業者の負担が軽減され、結果として生産性も向上します。
石膏ボードのリサイクル技術の確立と集塵機の導入は、環境保護と労働環境の改善に大きく寄与し、今後さらに重要性を増していく分野です。