風量型集塵機とは?選び方を解説
公開:2024.06.25 更新:2024.06.25
風量型集塵機は、大量の風量で広範囲の粉塵を吸引するタイプで、特に研削加工などで広がる粉塵に適しています。
風量型集塵機を選定する際は、粉塵の特性に合った吸引方式を選ぶことが重要です。広範囲の浮遊粉塵には風量型、付着した粉塵や重く溜まる粉塵には高圧型が適しています。集塵機の選定では、フードの形状や大きさ、ダクトの径、長さ、空気密度から必要な風量を計算し、それに合った機種を選ぶことが求められます。
鍛造工場ではカーボン粉の飛散防止にウォーターフィルムタイプの風量型集塵機を導入し、作業環境を改善しました。また、農薬製造会社では限られたスペースに対応する小型プリーツバグフィルター付き集塵機を導入し、粉末の回収とフィルター交換頻度の減少を実現しました。
目次
風量型集塵機とは
集塵機は、吸い込み方式によって風量型と高圧型に大きく分かれます。
◇風量型集塵機とは
換気の原理を利用して粉塵を吸い込む集塵機で、大きな風量を活かして、空間に浮遊する粉塵を空気ごと広範囲に吸引する方式です。まさに大きな換気扇といったイメージで、広範囲に粉塵が拡散する研削加工などでの使用に適しています。
◇高圧型集塵機との違い
高圧型集塵機は風量型とは異なり、高い圧力を利用して浮遊する粉塵を吸い上げる方式です。ピンポイントで狙った場所の粉塵を吸引しやすいのが特長で、似た方式として掃除機に例えられることがあります。
風量型集塵機の選定で失敗したケース
風量型集塵機を選定する場合はどのような点に注意すればいいのでしょうか。ここではまず、風量型集塵機の選定において失敗したケースを解説します。
◇最大風量だけで選んでしまった
ある会社では原料を小分けに充填する機械の中で、充填後の原料が舞い、機械のあちこちに付着していました。この舞い上がった粉塵を吸引する目的で風量型の大型集塵機の購入を検討します。機械のサイズが大きかったため、最大風量の大きな大型集塵機を選んだものの、状況は全く改善しませんでした。
状況が改善されなかった理由は、回収したい粉塵の特性に風量型集塵機が合ってなかったことです。その粉塵は粘着性が高く、ワークなどから引きはがす必要がありました。そこで重視すべきなのは、風量の大きさではなく静圧だったのです。
◇粉塵の種類によっては静圧が大切
静圧とは、空気中の塵や微粒子を吸引する際に発生する圧力、平たく言うと流体が静止している物に及ぼす力です。集塵機の能力を示す重要な指標のひとつでもあります。
高圧型は静圧型とも言われ、何かに付着している異物などの集塵に適しています。つまり先の会社は軽い粉塵を広く回収する風量型ではなく、粉塵を引きはがせる高圧型の集塵機を選ぶ必要があったのです。
集塵機を選定するときのポイント
上述したように集塵機を選ぶ際は、集塵機のメカニズムをきちんと理解しておくことが大切だとご紹介しました。続いてご紹介するのは、集塵機を選定する際のポイントについてです。
◇粉塵の状態で吸引方式を決定
空間を広範囲に浮遊する粉塵を吸引する場合は風量型、何かに付着した異物や少し重く下に溜まってしまうような粉塵を吸引する場合は高圧型の集塵機が適しています。このように吸引したい粉塵がどのような状態なのかを見極めて、集塵機を選定するのがポイントです。
◇総開口面積、風量、圧力損失などを計算
風量型集塵機を選定する場合は、フードの形状や大きさ、ダクトの径、長さ、空気密度などから必要な風量を割り出し、それに合った機種を選ぶことが重要です。
フードは、吸引する粉塵や環境に合った形状のものを選定することが必要で、フードの開口面積が大きくなるほど、最大風量の大きな集塵機が必要となります。ダクトホースの口径は、小さくしすぎると吸い込み風量が低下してしまうので注意が必要です。
必要風量や圧力損失などを算出できる簡易的な計算式が集塵機メーカーのホームページなどに掲載されているので、それらを参考に計算できます。正確な数値を算出する場合は、集塵機の設計や計画までサポートしている業者に依頼するのも手です。
風量を改善した解決事例
風量型集塵機は、さまざまな現場で生じる軽量な粉塵の回収に適しています。風量型集塵機で職場改善に至った導入事例を解説します。
◇飛散するカーボン粉を回収した事例
鍛造工場で自動車部品を製造しているこの会社では、鍛造工程で発生するカーボン粉が工場内に飛散してしまうという環境に悩んでいました。そこでウォーターフィルムタイプの風量型集塵機を導入し、作業環境が改善したという事例です。
カーボン粉は鍛造工程において、プレス時に使用する水溶性離型剤噴霧により発生するもので、工場内は常に霧がかかったような状態で、劣悪な作業環境になっていました。
そこでプレス機のスタンドから漏れないだけの風量計算を行い、正面側に居る作業者に粉塵曝露されない構造の集塵機を導入し、背面から吸引するフードを設けました。その結果、常に霧がかかったような状態の工場内の作業環境が改善されています。
◇排ガスから生じる粉末を回収した事例
農薬製造会社が、農薬乾燥による流動乾燥排ガスから生じる粉末回収のために風量型集塵機を導入した事例です。この会社は寒冷地にあり、屋外に集塵機を設置することは不可能でした。また、屋内には限られたスペースしかないため大型の集塵機は設置できません。
そこで限られたスペースに合わせ小型化したプリーツバグフィルター付きの集塵機を提案します。これにより粉末の回収はもちろん、円筒ろ布の4倍のろ過面積を持ったプリーツバグフィルターのおかげでフィルターの交換頻度が減り、ランニングコストの抑制にも成功しました。
風量型集塵機は、換気の原理を利用して粉塵を吸い込むタイプの集塵機で、大量の風量を活かして広範囲に浮遊する粉塵を吸引します。これは大きな換気扇のようなイメージで、特に粉塵が広がる研削加工などに適しています。一方、高圧型集塵機は高い圧力を利用して粉塵をピンポイントで吸引する方式で、掃除機のようなイメージです。
風量型集塵機を選定する際には注意が必要です。例えば、ある会社では最大風量の大型集塵機を選んだものの、状況が改善しませんでした。これは、回収したい粉塵の特性に風量型が適していなかったためです。
集塵機を選定する際には、粉塵の状態に応じた吸引方式を決定することが重要です。広範囲に浮遊する粉塵には風量型、何かに付着した異物や重く下に溜まる粉塵には高圧型が適しています。また、風量型集塵機を選定する際には、フードの形状や大きさ、ダクトの径、長さ、空気密度などから必要な風量を計算し、それに合った機種を選ぶことが求められます。
具体的な改善事例として、鍛造工場ではカーボン粉の飛散を防ぐためにウォーターフィルムタイプの風量型集塵機を導入し、作業環境を改善しました。また、農薬製造会社では、限られたスペースに対応する小型のプリーツバグフィルター付き集塵機を導入し、粉末の回収とフィルター交換頻度の減少を実現しました。