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防爆仕様の集塵機とは?種類や取り扱いメーカーを紹介

公開:2024.06.25 更新:2024.10.07

集塵機

防爆仕様の集塵機は、粉塵爆発のリスクを軽減するために設計されています。粉塵爆発は、粉塵、酸素、熱の3要素が揃うと発生しやすくなります。防爆仕様の集塵機はこの3要素を分離する構造となっており、爆発が発生しても被害を最小限に抑える機能を持っています。

簡易防爆集塵機は熱を発生させない設計、防爆集塵機は爆発時に破裂しない設計が特徴です。また、フードやダクトにも防爆対策が必要です。湿式集塵機は水を使用して粉塵を捕集し、火災発生の心配が少ないため効果的です。爆発圧力放散型集塵機は、爆発時のエネルギーを放散し、本体の破裂を防止します。

湿式集塵機をで粉塵爆発リスクを軽減し、圧力放散型集塵機で爆風と火炎の被害を抑制した事例があります。

防爆仕様とは

画像出典:フォトAC

仕事で大型集塵機を使用する会社にとって不安なのは、やはり事故のリスクです。集塵機の場合、粉塵による爆発事故のリスクが高いといわれています。そんな事故のリスクを軽減するため、集塵機の中には防爆仕様になっているものがあるのをご存知でしょうか。

◇粉塵爆発の被害を軽減する仕様

空気中の有機物の粉塵粒子に熱エネルギーが加えられると、その表面温度は上昇します。そしてそれらはやがて発火し、他の粉塵粒子にも熱が連鎖的に伝播して燃焼することで最終的には爆発に至る、これが粉塵爆発の原理です。つまり可燃性のある物質と酸素、熱の3つが揃うと発火する可能性があるのです。

防爆仕様の集塵機は、これら発火を引き起こす可能性のある3つの要素が機材内部で成立させないようにする構造となっています。しかしそれでも爆発が起こってしまうことはあるため、防爆仕様の集塵機には爆発の被害を最小限に抑える機能が備え付けられているのが一般的です。

◇防爆仕様の種類

防爆仕様の集塵機は主に2種類に分かれます。


・簡易防爆集塵機
簡易防爆集塵機は、発火に必要な3つの要素のうち、熱を発生させないことを徹底した構造になっています。粉塵と電気配線を遠ざける構造になっているのに加え、熱源を断ち切るような電気配線処理となっているのが特徴です。

・防爆集塵機
防爆集塵機も簡易防爆集塵機と同様に、粉塵爆発を起こさせないような構造となっています。それに加えて、万が一爆発した場合でも集塵機本体が破裂しないようにするなど、爆発の被害を最小限に抑える機能が備わっているのが特徴です。

◇潜在的なリスクがある

粉塵爆発を引き起こすのは、可燃性の物質だけではありません。実際、過去には小麦粉の粉塵が原因で集塵機の爆発事故が起きたケースもあります。つまり、どんな粉塵にも潜在的なリスクがあるのです。そのため、集塵機を含めた工業機器を利用する上では、発生する粉塵の危険性をしっかりと確認しておくことが必要不可欠です。

また、爆発の予防をすれば事故は起こらないわけでもありません。どんなに予防していても爆発などによる事故が発生する可能性はあります。事実、爆発が発生したシチュエーションは、イレギュラーな状態であることがほとんどです。

爆発を未然に防ぐことはもちろん大切ですが、爆発が起こってしまったときにどれだけ被害を最小限に抑えられるかが求められています。

◇フードやダクトにも防爆対策が必要

爆発事故の対策として集塵機本体を防爆仕様にすることはもちろん大切ですが、フードやダクトにも防爆対策が必要です。

例えば、吸込フードから裸火が流入するのを防止する、使用後はダクト内をきれいに清掃し、清潔な状態を保つ、定期的に検査を行うといった対策が必要となります。

なぜ防爆仕様の集塵機が重要なのか?

画像出典:フォトAC

防爆仕様の集塵機は、特定の環境で発生する粉塵や可燃性ガスによって引き起こされる爆発のリスクを軽減する集塵機です。防爆仕様の集塵機は、化学工場や石油精製所、食品工場などの、危険物が扱われる場所で使用されることが多いです。防爆集塵機の重要性は多岐にわたり、ここでは主に「安全性の確保」「リスク回避」「作業者の健康を守る」について解説します。

安全性の確保

粉塵は、特定の濃度に達すると引火や爆発の原因となることがあります。防爆仕様の集塵機は、爆発のリスクを抑えるために特別な設計が施されており、発生した粉塵を安全に処理することができます。これにより、作業環境の安全性が大幅に向上し、作業者が安心できる環境をつくることが可能です。

リスク回避

多くの業界では、作業環境の安全に関する法律や規制が定められており、防爆仕様の集塵機の使用が求められるケースがあります。防爆仕様の集塵機を導入することで、企業は法的なリスクを回避できるだけでなく、事故の発生リスクも低減できます。したがって、防爆仕様の集塵機は、業界標準を満たすためにも必要不可欠な存在といえるでしょう。

作業者の健康を守る

作業者の健康を守ることも、企業にとって重要な要素です。粉塵や有害物質を人が吸い込むと、長期的な健康被害を引き起こす可能性があります。防爆仕様の集塵機は、粉塵を効果的に捕集することで、作業者の健康を守り、快適な作業環境を提供することが可能です。

安全で健康的な職場環境は、従業員の生産性向上にも寄与するといえるでしょう。

防爆リスクを下げる集塵機

防爆仕様の集塵機のほかにも、爆発リスクを低減できる機種があります。

◇湿式集塵機

湿式集塵機とは、水などの液体を用いて空気中の粉塵を捕集する集塵機の総称です。鉄粉やオイルヒュームなどの細かい粉塵に対しては特に有効で、湿式電気集塵方式とウェットスクラバー方式などがあります。

ウェットスクラバー方式もそのひとつで、水を巻き上げ、内部の壁面に激しく衝突させ、極めて効果的な気液混合を発生させることで粉塵を水によって捕集するという仕組みです。

湿式集塵機は水を使っているため、火の粉を含んだガスであっても火災発生の心配がありません。また、静電気は水によって引き起こされる粉塵爆発も防げます。

◇爆発圧力放散型集塵機

爆発圧力放散型集塵機とは、集塵機内部で粉塵爆発が起きたときにそのエネルギーを放散して集塵機本体の破裂を防止する集塵機です。集塵機内部での火災発生を防止しているため、粉塵爆発が起こりにくい構造となっています。

万が一集塵機内部で火災が発生した場合でも消火口から安全に消火作業をおこなうことができますし、爆風と火炎の集塵配管への逆流を防止しているため、作業者を爆風から守れるのもポイントです。

粉塵爆発リスクを下げられた事例

画像出典:フォトAC

防爆仕様の集塵機を導入して粉塵爆発のリスクを下げられた事例をご紹介します。

◇アコーの湿式集塵機で改善した事例

この会社はセラミック製造会社で、爆発の危険性が高い粉塵を扱う実験室を新設しました。粉塵が大量に飛散することが想定されていたため、粉塵爆発を起こさないように金属粉を集塵できる機器として、湿式集塵機を導入したという事例です。

結論としてこの会社が導入したのは、水で集塵するウェットスクラバー式の湿式集塵機でした。配管内にもスプレーノズルをつけて、水と接触しない部分も徹底的に対策しています。

当初は乾式集塵機の導入を検討していましたが、湿式集塵機を導入したことで粉塵爆発のリスクは大幅に軽減されました。

◇アマノの粉塵爆発圧力放散型集塵機で改善した事例

この会社には、爆発性のある粉塵用集塵機をどうしても屋内に設置したいという希望がありました。また爆発放散口の問題点として、爆発時の爆風と共に火炎が本体外に出るというものがあり、導入する機器としてこの会社が選んだのが粉塵爆発圧力放散型集塵機です。

上記の問題点は、集塵機停止時等の対策として「ラプチャーディスク」を、爆発時の火炎対策として「爆発消炎ベント」を採用することで解決。消炎ベントを通過する際に吸熱と衝突により火炎の放出を抑制し、爆風と温度上昇を緩和することで周囲への被害を軽減することに成功しています。

防爆仕様の集塵機の選び方ガイド

画像出典:フォトAC

防爆仕様の集塵機を選ぶ際には、いくつかの重要なポイントを考慮する必要があります。ここでは、防爆仕様の集塵機の選び方について詳しく見ていきましょう。

防爆仕様の集塵機を選ぶときは、「捕集効率」を確認しましょう。粉塵の種類や粒子サイズに応じて、集塵機のフィルターがどの程度の効率で捕集できるかを確認することが大切です。とくに、微細な粉塵を扱う場合は、高効率のフィルターを搭載したモデルを選ぶことで、作業環境を清潔に保つことができます。

また、メンテナンスのしやすさも考慮すべきポイントです。集塵機のフィルターは永久的に使用できるわけではなく、定期的な交換が必要です。また、日頃からメンテナンスの一貫として清掃する必要もあります。

ただ、メンテナンス性の悪い集塵機の場合、清掃や交換をスムーズにできず後回しにしてしまうケースがあるでしょう。しかし、フィルターのメンテナンスをせずに放置していると、目詰まりしてしまって、効率的に粉塵を捕集できなくなってしまうのです。

さらに、詰まり度合いによっては集塵機そのものが故障してしまうリスクもあるので、定期的にフィルター清掃や交換ができるようにメンテナンスしやすい製品を選ぶのがおすすめです。

そのほか、音の大きさや振動レベルも選定基準のひとつといえるでしょう。とくに、長時間使用する場合は、静音性や振動を抑えた集塵機を選ぶことをおすすめします。

集塵機の稼働音が大きいと、作業者がストレスを感じやすくなり、生産効率が落ちてしまう可能性もゼロではありません。また、ほかの業務についている人も不快に感じてしまい仕事に集中できないケースもあるでしょう。集塵機の稼働音は、作業環境の快適性に影響を与えることから、実際の音や振動を確認しておくことが大切です。

また、アフターサービスや保証内容も忘れずにチェックしましょう。信頼できるメーカーを選ぶことで、万が一のトラブル発生時にも迅速に対応してもらえる安心感があります。長期的な稼働させることを想定して、アフターサービスが充実しているメーカーを選ぶことが重要です。

防爆集塵機を設置するときの注意点

画像出典:フォトAC

安全に防爆仕様の集塵機を使用するためにも、いくつかの重要な注意点を押さえておくことが必要です。

設置場所の選定

まず、設置場所の選定が重要です。防爆集塵機は、可燃性の粉塵やガスが発生する環境で使用されることが多いので、設置場所はその特性に適した場所である必要があります。具体的には、通気が良く、粉塵の蓄積を避けるためのスペースを確保することが求められます。

また、ほかの機器や作業スペースから適切な距離を保つことで、誤操作や事故を防ぐことができます。

電源関係

次に、電源関係についても確認しなければなりません。業務用の集塵機の場合、大きな電力が必要になることがあります。そのため、電源コンセントの種類によっては、集塵機が正常に稼働しない可能性もあることから、メーカーの担当者に確認したうえで電源工事をおこないましょう。

また、電気ショートや火災のリスクを低減するためにも、配線にも注意が必要です。作業者の動線に配線が出ている場合、足で引っかけてしまって配線が抜けてしまう可能性があります。そのとき、粉塵などが電源コンセントと電源ケーブルの隙間に入り込んで、火災が発生するケースがあります。

さらに、配線につまずいてしまって作業者が転倒してしまう可能性もあります。安全な環境をつくるためにも、電源関係にも注意しましょう。

周囲の環境

周囲の環境も考慮する必要があります。集塵機が作業場のほかの機器や作業者に影響を与えないよう、振動や騒音レベルを確認しましょう。とくに、長時間使用する場合は、作業環境が快適であることが望ましいです。

必要に応じて、音を吸収する素材を用いたり、防振マウントを設置するのがいいでしょう。ただし、メーカーによって判断が異なるケースがあるので、音や振動が気になる場合は、メーカーの担当者に相談することをおすすめします。

メンテナンス

また、定期的なメンテナンス計画を立てておくことも大切です。フィルターの交換や清掃は、集塵機の性能を維持するために必要不可欠です。メンテナンスをスムーズにおこなえるように、フィルター清掃や交換がスムーズにできる仕様の防爆集塵機を選ぶといいでしょう。

そのほか、使用する際の操作手順や緊急時の対策をしっかりと周知させておくことも重要です。作業者が正しい使用方法を理解し、トラブルが発生したときの対処法を知っていることで、より安全な作業環境を確保することが可能です。


粉塵爆発や火災のリスクを減らすためにも、防爆仕様の集塵機の導入を検討することが大切です。防爆仕様の集塵機は、発火原因となる「可燃性のある物質」「酸素」「熱」の3つの要素が組み合わさらないような構造であることから、事故を未然に防ぐことができます。

ただし、適切な条件下で設置できなければ集塵機本来の性能を発揮できないので、メーカーの指示にしたがって正しく設置、稼働させることが大切です。

安全な工場運営をしていくためにも、防爆仕様の集塵機の導入を検討したり、日頃から定期的なメンテナンスをおこなうようにしたりしましょう。

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