樹脂製造に大型集塵機がおすすめな理由とは?導入事例も紹介
公開:2024.02.14 更新:2024.02.14
樹脂製造現場において大型集塵機が重要なのは、粉塵による粉塵爆発や健康被害のリスクを最小限に抑えるためです。大型集塵機は、粉塵爆発を抑制する構造を備えた防爆集塵機や、湿式集塵機があります。これらは樹脂製造現場の高い危険性に対応し、安全性を確保します。
目次
樹脂製造現場の粉塵で生じるリスク
樹脂製造現場では、作業中に生じる粉塵によるリスクについて理解する必要があります。粉塵によるリスクは製品へ不純物が混入するリスクだけでなく、長期間吸引した場合の健康被害や、作業中の事故につながる可能性もあります。
◇粉塵爆発
空気中に浮遊している可燃性の微粒子が発火源と接触した場合、特定の条件下で急速に燃焼して爆発する現象を粉塵爆発と呼びます。粉塵爆発は、火炎や爆発音を発生させ、火炎が製造棟内の危険物や可燃物に類焼します。
結果として、造棟全体の火災に発展する可能性があるため、大きな被害をもたらします。極めて微細な粉塵は、その体積に対する表面積の割合が大きいため、空気中に十分な酸素が存在すれば、燃焼反応に敏感です。この状態で火気があれば、爆発的に燃焼します。
2017年12月に、富士市厚原の荒川化学工業富士工場で発生した爆発事故では、激しい爆発が発生しました。事故は、印刷インキ用の樹脂を製造する4階建ての工場建物で発生し、その建物1棟が全焼失しました。
事故後の調査によると、粉塵が静電気によって引火し、粉じんの堆積が爆発を引き起こす可能性を高めたことが明らかとなりました。そして、一部の作業者は作業服の着用指示を受けていなかったと証言しており、事故の背景が浮き彫りになりました。
◇粉塵吸引による疾患
また、高濃度の粉塵などを吸入することは、じん肺などの健康障害を引き起こす恐れがあります。特に大量に吸入した場合、これが肺に蓄積することで肺の組織が繊維化して弾力性を失います。
それに伴って咳や痰、呼吸困難、息切れ、肺機能の低下、間質性肺炎、気胸などの肺障害が発生しやすくなります。 さらに、気管支炎や肺がん、気胸などの合併症に罹患するリスクも高まります。肺の障害は回復せずに悪化する場合もあるため、十分な注意が必要です。
粉塵作業中は、じん肺の症状がわかりにくく、症状が徐々に進行することが数年から十数年かかることがあります。
◇有毒ガス
樹脂製造現場で発生する粉塵には、フッ素の原子を含む塩化ビニル樹脂やフッ素樹脂などが含まれています。これらの粉塵が燃焼すると、人体に有害な有害ガスが放出されます。これらの目に見えない有害ガスや微粒子が体内に侵入すると、呼吸困難やめまい、頭痛などの症状が発生する可能性があります。
樹脂製造現場に適した大型集塵機
画像出典先:消防防災博物館
集塵機には様々なタイプがあるため、樹脂製造現場に適した大型集塵機を選ぶことが重要です。
◇おすすめは湿式集塵機
乾式大型集塵機は発火の危険性があり、先述した爆発事故の現場でもこのタイプの大型集塵機が使用されていました。樹脂は、火災の危険性レベルが最も高い素材の一つです。
湿式集塵機では水で集塵やガス吸収ができるため、爆発や火災の心配がありません。そのため、火災の危険度の高い樹脂製造現場において適した集塵機と言えます。粉塵が乾燥した状態で着火源がある場合、発火の危険性があるため、火災対策を重視する現場には特におすすめです。
◇防爆集塵機もあるが大型は少ない
粉塵爆発を抑制する構造を備えた防爆集塵機も、樹脂製造現場に適しています。仮に爆発が発生した場合に備えて、爆発エネルギーによる集塵機本体の破裂を防ぐ仕組みや爆風と火災の集塵配管への逆流を防ぐ機能、そして安全な消火作業を行うための消火口などが装備されています。
しかし、大型集塵機に対応した防爆仕様のメーカーは限られており、特注で対応するケースも少なくありません。価格帯はメーカーによって異なりますが、基本的に防爆集塵機は通常の集塵機よりも高額な費用がかかる傾向にあります。
◇粉塵爆発を起こさないために
粉塵爆発は、特定の条件が揃ったときに発生する危険な現象です。その条件は、「酸素」、「爆発下限濃度以上の可燃物の粉塵」、「最小着火エネルギー以上の着火源」の3つです。
粉塵爆発を防ぐためには、まず着火源管理が欠かせません。工場や施設では、静電気、火花、摩擦熱、スパークなどの着火源が発生しないように管理する必要があります。これには、静電気対策や作業場での火気厳禁、粉体作業とは別の場所での作業などが含まれます。
さらに、粉塵の発生や堆積を防ぐことも重要です。工場内では定期的な清掃や換気を行い、粉塵がたまらないようにすることが必要です。また、粉塵の爆発性を確認するためには、原料や製品の安全データシート(SDS)を確認し、必要に応じて爆発性試験を行うことが推奨されます。
樹脂粉塵の捕集におすすめの大型集塵機
これまで解説した通り、樹脂製造現場では粉塵爆発の危険性が高いため、大型集塵機を選ぶ際は、防爆集塵機や湿式大型集塵機がおすすめです。樹脂粉塵の捕集には、これらの特性を持つ集塵機が効果的に機能し、作業環境の安全性を確保するのに役立ちます。
◇ウエットスクラバー(株式会社アコー)
この製品は、水を使って集塵と共にガス吸収や脱臭ができる湿式大型集塵機です。水を循環させ、排気ガスを水と接触させることで、ガスや粉塵を取り除くメカニズムを備えています。主に水溶性ガスに効果を発揮します。
酸性ガスやアルカリ性ガス、粉塵、ミスト、悪臭ガスなどの物質を取り除くことができるため、有害なガスが発生しやすい環境や法令を厳格に遵守する必要がある場合に役立ちます。また、爆発、火災の心配がないため粉塵が多く出る現場の環境の改善が期待できます。アコーの製品は、すべて顧客の要望や設置スペースに合わせてカスタムメイドでき、据置きだけでなく可動式の設計も可能です。
アコーの製品を長年使用してきた樹脂製造会社では、微細な粒子の増加に伴い、集塵が不十分で排気ダクトからの粉塵漏れが懸念されていました。この課題に対処するため、アコーは粉体の粒度を調査し、高性能湿式集塵機「ダブルスクラバー」のテスト機を使用して実際の集塵性能を確認を行いました。最終的には、粉塵漏れの改善につながったという成果事例があります。
◇粉塵爆発圧力放散型パルスジェット集塵機 PiF-SD/D(アマノ株式会社)
マグネシウムを除く爆発性および可燃性の粉体の吸引・集塵が可能な粉塵爆発圧力放散型パルスジェット集塵機です。アルミニウム製ファンケーシングや粉塵防爆モーターにより、集塵機内部での火花発生を防止し、電装ボックスはパッキン等で密閉されているため、粉塵爆発の原因となりにくい構造です。
万一集塵機内で粉塵爆発が発生した場合、逆止弁が火災の伝播を防ぎ、作業者を爆風から保護します。従来の機種と比較してフィルター面積が133%拡大されており、安定した集塵性能を発揮します。
樹脂製造現場では、粉塵によるリスク対策が重要です。粉塵爆発は、微細な可燃性微粒子が発火源に触れると発生し、建物全体の火災を引き起こす可能性があります。また、粉塵吸入はじん肺などの健康障害を引き起こし、肺機能の低下や合併症のリスクを高めます。
適切な集塵機の選択が重要であり、湿式集塵機や防爆集塵機が推奨されます。湿式集塵機は火災の心配がなく、アコー社の製品では粉塵漏れの改善が確認されました。また、アマノ社の粉塵爆発圧力放散型パルスジェット集塵機は、万一の爆発時に安全性を確保します。これらの対策を講じることで、樹脂製造現場での作業環境の安全性が向上します。